全国グルメ楽しんで 茨城の常陸太田「小倉屋食堂」 47都道府県名産 毎月7メニュー考案

茨城新聞
2022年4月4日

茨城県常陸太田市高柿町の「小倉屋食堂」が、2010年から提供している全国の食材を生かした料理「諸国漫遊メニュー」が好評だ。47都道府県を月替わりに選んで、旬の食材が詰まった七つの限定メニューを考案している。〝食の国内旅行〟はこの4月で4周目。田仲昭一店主(55)は「食事はおなかを満たすだけでなく、食べる時間そのものも楽しんでほしい」と願いを込める。

■4年で全国1周

諸国漫遊メニューは、「小倉屋食堂の売りはこれだと言えるものが欲しい」「コンセプトのあるメニューを作りたい」との思いから発案した。

各都道府県の観光や農林漁業などの関係課にメールなどで問い合わせ、各地の特産品の旬に合わせて月ごとに振り分け、定食ものと丼もの、麺類を基本に毎月7品目のメニューを考案した。4年で全国を1周し、2周目以降は市町村からも資料を取り寄せている。

例えば、桜エビの特産地、静岡県関連では、桜エビチャーハンなどを提供。3周目では熊本県の地鶏「天草大王」や、富山県・富山湾の宝石といわれる「白えび」など、その県らしい代表的食材を取り入れてきた。

県のイメージカラーを考えてテーブルクロスに反映させ、箸袋の色もそろえて統一感を演出。料理のネーミングも工夫し、方言も取り入れる。送られてきたパンフレットは店内に配置するなど活用する。

田仲さんは「料理を通して少しでもその地を知ってもらい、旅行気分を味わってもらえたらうれしい」と話す。

■磨いた腕生かす

食堂は約60年前に祖母が家計を助けるため開いた。かつ丼や天丼、野菜炒め定食など定食メニューが充実している。田仲さんは3代目。「子供の頃から料理人になるのは自然だった」という。

調理師専門学校を経て水戸市内のホテルに就職。ホテル内のコーヒーショップや宴会場、レストランを定期的に異動しながら洋食の料理人として腕を磨いた。宿泊客の朝食作りや会議用の弁当作りなどで和洋中の調理を体験したことが、今の諸国漫遊メニューの献立作りに役立っている。

28歳の時に「会社の歯車的な料理作りでなく、自分の腕で勝負したい」とホテルを辞め、父親と同じ厨房(ちゅうぼう)に立った。定番メニューにスパゲティやカレーなどを加え、「何度も足を運んでくれるお客さんに飽きられないように」と月替わりのメニュー作りに取り組み始めたことが、漫遊メニューにつながった。

■リピーターも増

メニューはご当地の料理もヒントにする。

「ひらめきがあるのだが、そうでないときは料理本やインターネット、パンフレットをいっぱい見て、風呂に入ってリラックスしているときにイメージがつながったりする」

材料を仕入れた農家からのアドバイスや、客からヒントをもらうこともある。自信を持って提供したのに注文が少なかったり、調理中のミスで生まれた料理が好評の一品になったりもする。

「毎月楽しみにしてくれるリピーターも増えてきた。その月を逃すと4年後にしか食べられないから」と田仲さん。「もっとメニューや料理の提供方法を工夫していきたい。お客さんと一緒に作っていきたい」と意欲的だ。

3月のメニューは地元茨城県だった。「漁師風パスタ@茨城」「美明豚の青椒肉絲(チンジャオロースー)」などが並んだ。4月は東京都となる。