《食いこ》カフェ・メモリーズ(茨城・つくば市) 景色眺めながら家庭料理
車の往来が絶えない国道から細い路地に入り、住宅や畑、雑木林が混在する一画。木立の奥にひっそり閑とたたずむ箱形の建物が今回紹介する「カフェ・メモリーズ」(茨城県つくば市)。
店の代表、鳥山玲子さん(70)が「他にはない癒やしの場をと、のんびりやっています」とにこやかに出迎えてくれた。木製テーブルと北欧椅子をしつらえた店内は落ち着いた雰囲気。飲食スペースいっぱいのピクチャーウインドーは、近代建築の巨匠、ル・コルビュジエが両親に建てた家の水平窓を思い起こさせる。窓の外には畑と林と空。
メインメニューはスープと一皿料理。人気のポトフには塩漬け豚バラブロック、ジャガイモ、ニンジンがごろごろと入る。シイタケやタマネギがこくを出し、レンコンの歯応え、トマトの酸味、ゴーヤの苦みが後味を引き締める。皿にはテリーヌ、卵と生クリームで作るキッシュ、ポテトサラダ、レタスとピクルス、パン、バターと手作りパイナップルジャム。ボリューム満点だ。
都内出身のジュエリーデザイナーの玲子さんと彫刻家の夫・豊さん(72)がつくば市に移り住んだのは1993年。つくば生活にもなじんだ2000年、玲子さんは長年温めてきた「私が行きたい、食べたい料理を出す店」を計画。当時大学院で建築を学ぶ長女が店舗を設計し、研究室仲間が建設の応援に駆け付けて02年完成。「飲食店の経験も知識もないまま」店はオープンした。
パンケーキの人気店となったり、店を人に貸したりして波はあったが、「プロのまねはできないし、しない。家族のために作る家庭料理が最高」と玲子さん。自らがおいしいと思うもの、好きなものをメニューに据えて、20年に再び店を取り仕切るようになった。目指すところは「仕事や生活を目まぐるしく送る人に、気取りのない料理とほっとくつろげる空間を提供すること。それが小さな感動につながれば」と考える。
玲子さんのオリジナル作品を扱うジュエリーショップを併設し、隣り合う自宅兼ギャラリーには豊さんの木彫作品も並ぶ。簡素でシンプルだが鳥山夫妻の思いがいっぱい詰まった店なのだ。
■お出かけ情報
カフェ・メモリーズ
▽つくば市大角豆2012の788
▽営業日は木、金、土曜日、正午~午後4時。駐車場あり
▽(電)029(858)5400
▽インスタグラムのアカウントは@cafe_memories_tsukuba