《いばらき御朱印めぐり》水戸市・蓮乗寺 法華経から一句選ぶ 筆跡異なる3人が担当

茨城新聞
2021年12月14日

水戸市内で最初にできた日蓮宗の寺院「蓮乗寺」が元吉田町にある。永禄元(1558)年、当時の水戸城主である江戸氏が、大本山中山法華経寺(千葉県市川市)の正覚院日慈上人(しょうがくいんにちじしょうにん)を招き、上寺町(水戸市内)に開山したのが始まりとされる。

同寺院は天保14(1843)年、水戸徳川家の命令により廃寺となっている。「徳川家に縁のある寺院は残ったようだが、かなりの寺院が消えていった」と、前刀賢雄(さきとうけんゆう)副住職(43)。

明治以降に再興計画が持ち上がり、本行寺(水戸市上水戸)の大森日勝が明治36(1903)年、現在地に本堂を建立したという。

日蓮宗では、御朱印のことを正式には「御首題」と呼ぶ。同寺院の御首題には、お題目「南無妙法蓮華経」と、法華経から選んだ一句がしたためられる。「(お題目には)法華経の教えに命をささげます」という意味があるそうだ。

御首題は、住職の前刀啓運(けいうん)さん(79)はじめ、副住職の賢雄さん、僧侶の宏祐(こうゆう)さん(41)が担当する。それぞれの筆跡が違うのもまた面白い。「(御首題に)書き込むお経の一部は、その時々の気分や参拝者を見て、贈りたい言葉を決めている」と、賢雄さんは言う。

前刀啓運住職が書いた御首題(左)と前刀賢雄副住職が書いた御首題(右)

 

明治時代に建てられた本堂は、2011年の東日本大震災の影響と老朽化のために、19年に建て替えられた。現在は、新型コロナウイルス感染防止のため一般公開していないが、本堂には綿帽子をかぶった宗祖・日蓮聖人のご尊像を祭っている。

この綿帽子の姿でいるのは、11月11日から来年4月28日までの期間限定という。日蓮聖人には、布教中に襲撃されたときに眉間に負った傷があったとされる。賢雄さんは「その傷が寒さで、痛まぬようにかぶせている」と、説明する。また、日蓮聖人を囲むように、多宝如来と釈迦(しゃか)如来、地涌菩薩(ぼさつ)も祭られる。

同寺院では毎月1日、その月を大切に生きるられるよう、コロナの収束や、皆が幸せを願い祈りをささげる「世界平和祈願祭」を終日行う。宗派を問わず誰でも、好きな時間に参加できる。

前刀住職は「御首題を縁として、世界平和に目を向け、コロナの収束を祈る機会になれば。参拝者方の願いがかないますように」と語った。(第1土曜日掲載)

■メモ
アクセス…水戸市酒門町の国道6号酒門六差路を水戸駅方面へ曲がり、右側に「蓮乗寺」の小さな看板が見えたら右折。細い路地を道なりに進んだ右手にある。
住所…水戸市元吉田町2705
電話…029(247)5236
御朱印(御首題)…「南無妙法蓮華経」の1種類。金額の設定はなし。御朱印の受け付けは午前9時~午後3時ごろまで。事前に問い合わせを。

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