彩磁追究した40年の軌跡 佐野の吉澤記念美術館 齊藤勝美展、81点紹介 先駆者 板谷波山の作品も

下野新聞
2021年4月27日

 【佐野】葛生東1丁目の市吉澤記念美術館で特別企画展「齊藤勝美(さいとうかつみ)-ただひたすらに彩磁をもとめて-」が開かれている。河内町(現宇都宮市)出身の陶芸家齊藤勝美さん(63)の作品のほか、近代工芸の先駆者で、陶芸家として初めて文化勲章を受章した板谷波山(いたやはざん)の作品など81点を展示している。7月4日まで。

 齊藤さんは益子焼の生産に従事していた21歳の頃、書店を訪れた際に波山の作品集と出合い、「自分が作りたいのはこれだ」と天啓に打たれたように感じたという。以来、40年の歳月をかけて独学で水溶性顔料と彫刻を主にした波山の技法「彩磁」を追究してきた。

 同展では夏の夜に一晩だけ咲く「月下美人」をモチーフにした齊藤さんの会心作「彩磁月下美人文大壺(さいじげっかびじんもんおおつぼ)」のほか、初期から現在に至るまでの作品を多数紹介している。

 波山の軌跡を追った映画「HAZAN」の撮影で使用するために制作した作品もお披露目。一切の妥協を許さず「少しでも傷のある作品は割る」というイメージのある波山を表現するため、劇中でたたき割られた陶片も見どころの一つだ。

 トークイベントは新型コロナウイルス禍で中止となったが、齊藤さんが自身の作品や波山について語るスペシャルトークは同館ホームページで公開中。同館の末武(すえたけ)さとみ学芸員(42)は「齊藤さんの作品をここまでそろえて展示できるのは当館だけ。ぜひ見てほしい」と話す。

 前後期制で、前期は5月9日まで。展示作品を16点入れ替え後期は同15日から。午前9時半~午後5時。5月10~14日と毎週月曜休館。観覧料一般520円、大学生以下無料。(問)同館0283・86・2008。

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