渋沢栄一の直筆展示 つくばの「ブックセンター・キャンパス」 三島由紀夫、大久保利通も
近代の著名人による直筆の手紙を集めた企画展「手紙」が、つくば市吾妻の古書店、ブックセンター・キャンパスで開かれている。新1万円札の顔で日本の資本主義の父とされる実業家、渋沢栄一の手紙をはじめ、政治家、文学者、画家、書家など各界の大物らによる25点が展示されている。3月14日まで。
手紙は同店代表の岡田富朗さん(84)が集めた。差出人は渋沢のほか、三島由紀夫、大久保利通、志賀直哉、島崎藤村、有島武郎、斎藤茂吉、谷崎潤一郎、火野葦平、木村武山、小川芋銭など。毛筆で書かれたものが多いが、ペン字の手紙もある。
見どころは、差出人のぬくもりを感じる内容。14日に始まったNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公でもある渋沢の手紙は、三井銀行や王子製紙で活躍した実業家の藤山雷太に宛てたもの。米国からの輸入品を取り扱う人物を藤山に紹介し、会ってやってほしいと依頼している内容で、当時の実業家同士の付き合いが想像できる紹介状だ。
現在の北九州市出身の芥川賞作家、火野葦平の手紙は1950年代のもので、当時の文芸雑誌「富士」編集部へ宛てたもの。これも紹介状で、デビューした頃の松本清張を推薦する内容。清張本人に持たせ、出版元の雑誌編集部へ直接行かせたことが分かる。清張も同市出身で、火野が同郷作家の才能を評価し、応援していたことがうかがえる。
三島由紀夫の手紙は、映画・演劇プロデューサーの葛井欣士郎宛てに書かれたもの。ペン字で「若者向け雑誌の人気投票で1位になりたいから応援してほしい」という旨の内容だ。手紙を集めた岡田さんは「著名人の手紙は、何年かたてば立派な文化財」と語る。
展示品のほとんどを確認した大東文化大文学部の高橋利郎教授(48)は、「生きた彼らに会うことはできないが、彼らの残した肉筆に触れることで、生きた証しを感じることができる。会場で彼らの『体温』を感じてほしい」と来場に期待する。
高橋教授はさらに「昔の人の字を解読するのは難しいが、苦労して読むのも一つの文化。この約100年で、メッセージのやりとりが大きく変わったことを感じるのも、見どころでは」と、同展の魅力を話す。火曜定休。午前10時~午後4時。問い合わせは同書店(電)029(851)8100。
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