米の終戦宣伝ビラ公開 【平和を考える】「うつのみやの戦災展」開幕 市内唯一確認、寄贈受け

下野新聞
2022年7月9日

【宇都宮】第2次世界大戦の終戦直前に米軍機が市の上空からまいたビラの1枚が、8日から宇都宮城址(し)公園内の清明館で始まった「うつのみやの戦災展」で初めて公開されている。日本政府が降伏を受け入れるという内容が書かれており、当時の外交機密だった。主催者の市教委が市内で拾われたと確認しているのはこの1枚のみで「歴史的な資料」と位置付けている。

ビラはA6判に相当する小さなもの。「日本の皆様」と題し、「お国の政府が申し込んだ降伏条件を皆様にお知らせするためにこのビラを投下します」とある。日本政府と当時の連合国のポツダム宣言を巡るやりとりと、同宣言の全文が記されている。日本政府は当時、この事実を国民に知らせていなかった。

このビラを市教委に寄贈したのは、当時西原国民学校(現西原小)2年生だった南場健成(なんばけんせい)さん(84)=埼玉県越谷市大林。同校近くに住んでいた叔父から譲り受けた。南場さん自身も当時米軍機とみられる航空機が上空からビラをまいているのを目撃していたが、拾えなかった。当時は9歳。叔父にもらったビラを見ても「内容は理解できなかった」と話す。

市教委によると、1945年8月13、14の両日、このビラは東京、大阪、京都、長野など全国各地で広く散布された。当時は米軍の宣伝ビラを拾っても読まずに警察へ届けなければならず、現在まで残っているものは比較的少ないという。

このビラの散布で、軍部のクーデターを危惧した昭和天皇が終戦を決断したとの説もある。市教委文化課は「歴史的に貴重なビラが宇都宮でも散布されていた。米軍から見た市の位置付けを考える意味で重要な1次資料」としている。

戦災展は宇都宮空襲の被害実態など約50点の資料を展示。8月31日まで。