《食いこ》元屋敷(茨城県那珂市) 和膳と楽しむ庭園の四季

茨城新聞
2022年5月1日

緑豊かなモミジや満開のシダレザクラ-。敷地内に一歩足を踏み入れると、木々が彩る庭園が広がり、その奥に小さな古民家がたたずんでいる。茨城県那珂市の元屋敷。春はサクラ、夏はケヤキなどの新緑、秋は紅葉と四季折々の景色が魅力的な食事処。提供するのは、おひたしや煮物など素朴で飾らない家庭料理の和膳だ。

季節によってメニューが変わるおまかせ和膳

 

築100年近い古民家は、オーナーの海老沢昌俊さん(77)の実家の離れだった。しばらく空き家になっていたが、「生まれ育った場所を大切にしながら活用していきたい」と思い立ち、間取りはそのままに、壁を塗り直すなど少し手を加え、2000年に食事処としてよみがえらせた。

「子どもの頃は、むしろを広げて干し物をしたり、鶏が歩き回ったりする農家の庭だった」と、海老沢さんは庭を見渡し懐かしむ。長年、造園業を営んできた経験を生かし、約10年かけて木々を増やすなどこつこつと整備し、季節の移ろいが感じられる趣ある場所に仕上げた。

自慢の場所は庭園の中心部にある滝と、その下にある枯れ池。滝は奥深い山にあるイメージで、ごつごつとした石の間を少量の水が流れ落ちるように工夫した。流れた水は土を敷いた枯れ池に染み渡り、「山の自然の景色を、庭にいながら見ることができる」。

湧き水の流れるつくばいも数カ所に設置した。「静かな庭に、ちょろちょろと水の音がすることで、心の安らぎになる」と海老沢さん。敷地内には、江戸時代につくられたみそだるを改修した茶室や地元出身の画家、佐川華谷らの掛け軸などを展示したギャラリーを設け、食事で訪れた客に喜んでもらう仕掛けも。

米や野菜など「なるべく自家製を使用する」という料理は、妻の秀子さん(73)と長男の妻、文子さん(46)の手作りだ。「季節を感じてもらいたい」と旬の食材を取り入れ、取材に訪れた日は、色鮮やかな押しずしと菜の花のおひたし、かき卵のみそ汁など数品が並んだ。秀子さんは「お客さんにおいしいと言ってもらえるのが何よりもうれしい」とほほ笑む。

「庭を眺めながらゆったりと食事し、四季を楽しんでもらいたい」。庭の景色と食材から季節を感じることに感謝し、接客に当たる海老沢さん家族にも笑顔があふれる。

■お出かけ情報
元屋敷
▽那珂市本米崎2014
▽営業時間は午前11時~午後4時(ラストオーダーは午後1時半)
▽定休日は月・火・土・日曜
▽(電)029(295)8718(完全予約制)