《食いこ》「心癒やす」思い込めて 和菓子工房 きくや(茨城県坂東市)

茨城新聞
2022年3月3日

団子やどら焼きといった定番から、チョコレートとあんこを合わせた洋菓子風まで、種類豊富な商品が並ぶ「和菓子工房 きくや」(茨城県坂東市岩井)。今年創業60年を迎え、代表の木村健一さん(53)と息子の幸平さん(29)が二人三脚で菓子作りに励む。幸平さんは、全国和菓子協会が主催する認定試験で、全国に約140人しかいない優秀和菓子職認定を受けた職人。京都府内や鎌倉市内で修業したのち、約3年前から店に加わった。

3月3日のひな祭り前後や、桜が咲く同月末から4月ごろになると、毎年桜餅の注文が増えるという。薄く焼いたもちにあんを包んだ筒状の関東風は木村さん、丸い形で表面にもち米の粒が見える関西風は幸平さんがそれぞれ手掛ける。

関東風は「ふっくら、もちもちした食感になるよう、白玉粉と小麦粉の配合に気を付けている」と木村さん。薄すぎず、厚すぎず仕上げた餅に、北海道産小豆のこしあんを使用し、「一口食べたときにあんと餅の食感が合うよう、あんこは滑らかに仕上げている」。

一方、もち米を蒸して乾燥させ、砕いた「道明寺粉」を使う関西風は、粉の粒子がより細かいものを使うのがこだわり。「粉に繊細さを求めることで、口当たりがよくなる」と幸平さん。こくのある北海道産の大納言小豆を炊いて作った自家製の粒あんも自慢だ。

丹波大納言小豆で作った自家製粒あん

 

華やかでかわいらしい上生菓子も看板商品の一つ。幸平さんが中心となって、春はひな人形の着物の袖や桜をモチーフにした菓子をそろえ、店内を彩る。「桜と一口にいっても咲き始めや散り際など、いろいろな〝表情〟がある」。季節の移ろいによる微妙な変化を表現できるのも、繊細な上生菓子ならでは。

平日でも客足は絶えないが、新型コロナウイルスの影響で人の集まる場が減り、和菓子が使われる機会が激減したという。それでも木村さんは「こんなときだからこそ、うちに来れば何か面白いものがあると思ってもらいたい」と、和菓子を中心に50種類以上の商品をそろえる。

「心を癒やしたり、元気づけられたらうれしい」。木村さん親子は、人の気持ちに寄り添う和菓子を作り続ける。

 ■お出かけ情報
和菓子工房 きくや
▼坂東市岩井3302の6
▼営業時間は午前9時~午後7時
▼定休日は火曜
▼(電)0297(35)2095