武家屋敷、茨城・土浦市に寄付 国登録文化財「一色家住宅」 子孫「憩いの場に」

茨城新聞
2021年12月28日

土浦藩年寄格の元居宅で国登録有形文化財の「一色家住宅」(茨城県土浦市西真鍋町)について、所有者で彫刻家の一色邦彦さん(86)=牛久市=が、市に住宅と土地を寄付した。かやぶき住宅は、江戸時代末期に建てられ庭園があり、歴史的価値が高い。贈呈式が22日に開かれ、一色さんは「憩いの場として活用して」と期待を込めた。市は文化財として保全しつつ、観光や文化振興に役立てていく考えだ。

一色家住宅は、土浦藩の家老に次ぐ年寄格を務め、県内初の国立銀行「第五十国立銀行」(常陽銀行の前身)の創設者、一色範疇(はんちゅう)の居宅。同市並木にあった同藩士の住宅を、明治期に移築したと伝わる。戦国時代の大名、小堀遠州風の築山や池付きの日本庭園があり、市内では書院造りの和室など武家屋敷としての名残をとどめる唯一の場所という。2001年に主屋が国登録文化財となった。

土浦市に寄付された国登録有形文化財の「一色家住宅」=同市西真鍋町

 

 

主屋はかやぶき屋根の平屋で、床面積は201平方メートル。1989年に別棟が敷地内に増築された。今回は庭につながる山林を含めた土地約3900平方メートルも寄付されている。寄付は今月1日付。

建物は2019年まで親族らが料亭として使い、閉店後は閉鎖していた。

この日の贈呈式は、一色さんと愛子さんの夫妻、長男で日本画家の直彦さん(55)、市から安藤真理子市長が出席した。

一色さんは戦時中に東京から両親の出身地、土浦市に移り、1968年にアトリエを牛久市に構え、彫刻界で活躍している。茨城新聞の取材に「(住宅を)何とかしたいと思っていた。由緒ある素晴らしい空間。静かな憩いの場、和気あいあいとした場として使ってもらえれば」と語った。

安藤市長は「うれしい限り。市民の誇りとなる活用を考える。自転車愛好家などが全国から来ており、歴史を感じてもらえる場にしたい」と感謝した。

市によると、市内にある建物の国、県、市の指定文化財は19件、国登録文化財は18件ある。市文化振興課は「補修が必要な場所もあり、利活用の計画、検討をしていきたい」としている。

地図を開く 近くのニュース