本と人形で語る戦争 那珂湊図書館で企画展 子どもの生き抜く姿表現

茨城新聞
2020年7月26日

今年は戦後75年の節目の年。昭和の元気な子どもたちを知ってもらおうと、ひたちなか市立那珂湊図書館(同市鍛治屋窪)で、企画展「子どもたちの日常」が開かれている。館内のギャラリーに、絵本や児童書など約70冊の戦争関連本とともに、その時代をたくましく生き抜いた子どもや親子の姿を表現した温かみのある創作人形を展示。企画担当者らは「コロナ時代に、アートの癒やしの要素を取り入れながら戦争について感じる機会となれば」と思いを込める。8月22日まで。

創作人形と書籍が紹介されている「みなとアートギャラリー」=ひたちなか市鍛冶屋窪の同市立那珂湊図書館

同展は、同館が今年から始めたアートプロジェクトの一環。水戸市在住の創作人形作家、知神けい子さんが主宰する人形教室「遊工房」で手掛けた人形を展示している。アートスペース「自由空間あとりえ“ず~む”」(水戸市)が同企画をコーディネートした。

同館入り口付近の小さな「みなとアートギャラリー」には、優しい色合いの絵が飾られ、エプロン姿の母親と小さな子どもなど5組の人形を展示している。擦り切れたズボンをはいた男の子の人形の隣には、戦争で亡くした弟をおんぶしながら歩く少年の写真が目を引く書籍「トランクの中の日本」(小学館)を置いている。制作を手掛けたのは、同教室に通う人形作家の加藤桜子さん(35)。ズボンの生地はやすりでこすり、灰の中に入れ、焼け跡を歩いた様子を再現したという。「悲しみを抱えながらも、強く生きていく気持ちを表した」と説明する。

また、知神さんの作品で、男の子が水鉄砲を持ち、はじけるような笑顔を見せた人形たちも目を引く。その傍らには「8月6日のこと」(河出書房新社)などの書籍が紹介されている。窓際には、虫取りする麦わら帽子をかぶった女の子の人形がそっと置かれ、物語性が自然と想像が膨らむかのように「火垂(ほた)るの墓」(徳間書店)が紹介される。

親子で訪れていた、ひたちなか市、主婦、長岡朋子さん(46)は「長女は広島に原爆が落とされた8月6日生まれ。本を通して戦争の悲惨さを教えるいい機会。自分も勉強し直し、子どもに伝えていきたい」と見入っていた。

問い合わせは同館(電)029(263)5499

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