連載《食いこ》新そば「香り楽しんで」 「そば処いい友」(茨城県常陸太田市) 新そば「香りを楽しんで」
今年も新そばの季節が巡ってきた。茨城県が全国に誇るブランド品種「常陸秋そば」の発祥の地・常陸太田市。同市内高貫地区にひっそりと店を構える「そば処 いい友」では、先月末から香り高い新そばが登場している。
同店は2002年に開店。店名の「いい友」には、「スタッフもお客さまも皆友だち」という、温かな思いが込められている。店主の武子英二さん(67)は、市内22軒のそば屋が加盟する団体「常陸太田のおそば屋さんの会」の発起人でもある。「宮田達夫市長の呼び掛けで会が立ち上がった。そばで常陸太田を盛り上げよう」と、自ら発起人を買って出た。
本業の大工の傍ら開業したのは、そば打ちの趣味が高じてのことだった。週末限定で店を開けた。大工を引退した現在は、そばの道一本で、栽培から手打ちまで一貫して手掛けている。
「昔から地元では、西の『赤土』、東の『高貫』と言われるほど、この土地で育ったそばは、香りや甘味が良いんです」と武子さん。
「今年も品質のいいそばができた」。先月中旬、店周辺の畑でそばの実を収穫した。収穫後は実と香りの酸化を防ぐため、5~8度の低温で冷蔵保管するのが、武子さんのこだわりだ。
「『香り』を存分に楽しんでもらいたい」と、実を石臼で引いた後は、目の粗い振るい機で手で振るっていく。こうすることで、実に付いた緑色の皮も余すところなく使うことができ、香りが高くなるそうだ。
のど越しも大事にしている。そば粉とつなぎとなる小麦粉の配合は「外二」。そば粉1キロに対し、小麦粉200グラムを混ぜ合わせる。生地をこねて1.3ミリに延ばしたら、「トントントン」と小気味良い音を立てて切っていく。そば作りは「人に教わっても、同じ味は出せない」と、自己流を貫き、味を追求してきた。
同店のそばのメニューで「野菜天ぷら盛りそば」(1000円)は、「お客さまの7割が注文している」というほど人気が高い。武子さんの友人が揚げる、自家栽培の野菜やリンゴ、そばの耳など7、8種類の天ぷらの盛り合わせだ。
「(おそば屋さんの会で)さらに技術向上に努め、おいしいそばを提供したい」。職人魂をのぞかせた。
■お出かけ情報
そば処 いい友
▼常陸太田市高貫町1446の4
▼営業時間は午前11時~午後2時
▼営業日は金~日曜日
※そばのメニューは15品。季節限定メニューで、10月~3月までの「つけけんちんそば」(1000円)もある。手打ちうどんもある。
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