《旬もの》土にこだわる「カミアカリ」 大久保農園(茨城県大子町) 巨大胚芽米、栽培は全国で4人 

茨城新聞
2021年9月18日

茨城県大子町山田は周囲をなだらかな丘陵に囲まれ、久慈川の支流押川が東西に流れる。川沿いの水田にはこの季節、黄金色の稲穂が風にそよぐ。東西が開けていることで日照時間が長く「日渡の里」と呼ばれる。そのほぼ中央に位置する大久保農園=大久保秀和代表(50)=では全国で4人、県内では唯一「巨大胚芽米カミアカリ」を栽培する。

一般的な玄米と比較して、約3倍の胚芽を持ち、ぷちぷちとした食感、トウモロコシのような甘く香ばしい香りが特徴の玄米食専用の品種だ。ビタミン類やアミノ酸の一種で、リラックス効果が期待できるGABA(ギャバ=ガンマアミノ酪酸)を豊富に含む。県内では限られた総菜店や料理店でのみ扱っている。

大きな胚芽が特徴のカミアカリ

 

カミアカリは1998年、静岡県のコシヒカリ水田で突然変異株として発見された。2008年に品種登録。前年には稲作農家や米店でつくる勉強会が発足した。基本方針は生産者、流通業者、消費者がカミアカリの特徴を理解し、おいしく食べる-を共通認識とする「三位一体化」。100年後も栽培されるコメを育て上げるのが目標だ。

「全国お米日本一コンテストinしずおか」で06年、最優秀賞を受賞した大久保さんも勉強会に加わり、08年の試験栽培からカミアカリ探究が始まった。

出自からして個性的なカミアカリだが、土地や気候、肥料や生産者によっても食味が大きく変わり個性的だという。ちなみに大久保さんのカミアカリは「香りや味わいにまとまりがあり、食べやすい。優等生と言われています」と笑う。

大久保さんにとってコメ作りの基本は土作り。化学肥料に頼らず、米ぬか、ふすま、大豆かす、菜種油などを配合したオリジナル有機肥料を使い、土を作り育てる。そうやって育てた水田ごとの地力に合わせて稲を選び、稲の力を引き出す米作りに励む。もちろんカミアカリを通じて広がったつながりや蓄積も、主力の特別栽培米によるコシヒカリ作りに生かされている。

農薬は極力使わず、除草も機械除草だ。だから「うちの田んぼは虫がいっぱい」と大久保さんが指さす水田の上を、虫を追うツバメが多数飛び交う。「25年コメを作っているが、毎年毎日勉強。収量を欲張らず、ストーリーがあって、指名買いされるコメブランドを確立したい」と思い描く。

■メモ
大久保農園
▽住所は大子町山田37
▽(電)0295(72)4210

ファクス 0295(72)4237
▽http://www.okubo-farm.com
▽Eメール info@okubo-farm.com

地図を開く 近くのニュース