写経会で修復費用募る 足利・最勝寺 両崖山火災 搬出の文化財 HPでも協力呼び掛け

下野新聞
2021年5月31日

 【足利】2月の両崖山火災で緊急搬出した本尊などを修復しようと、大岩町の「大岩山多聞院最勝寺」は30日、修復費用の奉納を募る勧進写経会を初めて開いた。県指定文化財の本尊3像などに劣化や損傷が認められ、修復に数千万円程度と多額の費用が見込まれるためという。同寺は今後も写経会を継続するほか、ホームページ上で寄付を募る考え。

 同寺は745年開山で、日本三大毘沙門天の一つとされる。毘沙門天像と脇侍(きょうじ)2像の本尊は県指定文化財で、1762年の本堂再建以来、約260年間不出だった。

 しかし2月21日に同寺南東に接する両崖山で火災が起き一変。寺方面への延焼が見られた同23日から約1週間かけて、信者や近隣寺院、足利工業高野球部員らの協力を得て、本尊3像や市指定文化財の絵馬や金剛力士像の一部など約100点をやむなく市郷土資料展示室に運び出した。

 搬出は本来、専門業者に依頼して1カ月近い調査や計画を立てて慎重に実施するもの。火災鎮圧後に本尊などを本堂に運び戻し、専門家が損傷状況を調査すると、経年劣化による傷みに加え、緊急搬出で生じた部材損傷も確認されたという。

 同寺が勧進料1人2千円で呼び掛け実施した写経会には、家族連れなど25人が参加。大岩山中腹の緑に囲まれた境内食堂で、黙々と般若心経を筆書した。

 佐野市若松町、無職高橋富士男(たかはしふじお)さん(71)は「以前ハイキングで訪れていた場所でもある。修復へ少しでもお役に立てれば」と話す。

 同寺は今後も毎月第4日曜に写経会を開く予定。執事の沼尻了俊(ぬまじりりょうしゅん)さん(32)は「この先1000年、それ以上の歴史をつないでいけるよう、丁寧に修復していきたい」とし、協力を呼び掛けている。

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