《旬もの》春先取りのチューリップ すみれ花園(行方市) オンリーワンの商品作り

茨城新聞
2021年2月23日

行方市にある「すみれ花園」。事務所前に、本格的な春の訪れを先取りするかのように、色とりどりのチューリップが咲きそろう。「これは出荷用ではありません」と代表の山下三夫さん(37)。「たくさんの品種から選んだチューリップの咲き具合を確認する意味もあって試験的に栽培している」と説明してくれた。

購入者の手元で花が開く状態にするため、温室のチューリップのつぼみはまだ固い。「つぼみの先端が色づくか色づかないかぐらいの状態」で出荷する。

東京都の花市場に勤務していた山下さんは結婚したのを機に8年前、妻裕加里さん(35)の父高須俊行さんが営む高須花園に就農。昨年8月に高須さんから事業を継承し、名称を変更した。「誠実、謙虚というスミレの花言葉が経営理念と合っていた。長く元気に花を楽しんでもらえるよう、ひた向きに花作りをしたい」と気を引き締める。高須花園を約45年前に立ち上げた高須さんが培ってきた花作りの技術を受け継ぎながら、山下さん夫妻は鉢花の生産に励む。

約4000平方メートルの温室でチューリップや母の日向けのヒマワリに、マリーゴールド、ケイトウなどの鉢花を季節ごとに生産。関東や西日本の市場へ出荷する。直売や地元の道の駅にも出している。チューリップは卒業式向けに1月~3月上旬、赤や黄、ピンク、八重咲き、斑(ふ)入りの葉など約30品種を栽培する。

山下さんは農家出身にはない自由な発想で「オンリーワンの商品作り」に奮闘する。背の高いチューリップは寄せ植えすると後列が定位置になりがちだが、配列が自由にできるように背の低いチューリップのポット植えを商品化した。

マリーゴールドはオレンジや黄など色違いの花を鉢に寄せ植えし、ブーケのように仕立てる。3月中旬からの出荷に合わせ、2月は芽を出したばかりの小さな苗を定植する細かい作業が行われていた。

マリーゴールドの定植作業

昨年は新型コロナウイルスの影響で卒業式やイベントが中止となり売り上げが減少した。そこで農業や漁業の生産者から直接購入できるサイトでネット販売を始めた。外出自粛でプレゼントを直接届けられない人や買いに来られない人から注文が入る。担当する裕加里さんは「花で癒やされると喜ばれている。反応がじかに聞けるのがうれしい」と購入者からの画像やコメントに元気をもらっている。

■メモ
すみれ花園
▽住所は行方市玉造甲718
▽(電)0299(55)2729

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