檜皮ふき替え 茨城・鹿島神宮 令和の大改修、幣殿・拝殿18万枚

茨城新聞
2022年8月24日

全国に約600ある鹿島神社の総本宮、鹿島神宮(茨城県鹿嶋市宮中)で、国指定重要文化財「幣殿・拝殿」の檜皮(ひわだ)ぶき屋根のふき替え工事が本格化する。本殿と拝殿をつなぐ幣殿や拝殿の屋根に計18万枚の檜皮を敷き詰め、1年後の完成を目指す。2026年までかけて進める「令和の大改修」の一環。施工責任者は「曲線美を再現したい」と話す。

鹿島神宮は国内屈指の歴史を持ち、創建は紀元前660年と伝えられる。

現在進める令和の大改修は、2026年に予定する12年に1度の大祭「鹿島神宮式年大祭 御船祭」に先立つ記念事業。20年11月に始まり、26年6月に完了を予定する。計画によると、21~22年に「奥宮本殿」、22~24年に「幣殿・拝殿」、24~26年に「楼門」をそれぞれ修繕する。

同神宮の社殿造営修理記録によると、関ケ原の戦いに勝利した徳川家康が1605年、旧本殿を寄進。その後、建物や屋根など部分的な修理が数年おきに行われてきた。今回のように、大規模な改修工事をまとめて行うのは初めて。

各所で経年による傷みや腐朽、退色が見られ、「部分的な応急処置では限界と判断し、長期工事を決めた」(同神宮)。複数の国指定重要文化財の改修とあり、事業費は国や県の補助金と寄付金などで賄われる。

幣殿・拝殿は1619年、徳川2代将軍の秀忠が本殿などとともに寄進した。江戸権現造りの先駆的形式として文化財的価値が高く、屋根は関東では珍しい檜皮ぶき。前回修繕から25年が経過しており、コケや腐食が見られるなど劣化が進んでいた。

檜皮ぶきは飛鳥時代から伝わる伝統技法で、和歌山県や奈良県など関西地方で採取したヒノキの樹皮が材料となる。文化財保護のための専門知識と技術が求められ、設計・管理は文化財建造物保存技術協会(東京)、施工は谷上社寺工業(和歌山)が担う。

古い檜皮は既に屋根から撤去。9月から新しい檜皮を敷き詰める。

檜皮は、短冊状に切り落とした樹皮を4枚つなぎ合わせた後、上下を切りそろえて幅15センチ、長さ75センチ、厚さ1・5センチの1枚にする。屋根の下部から上部に向かって1・2センチずつずらして重ね、天然の竹による竹くぎで留めていく。

切り揃えたヒノキの樹皮

 

屋根の面積は約300平方メートル。檜皮は約18万枚が必要となるほか、熟練職人の技が求められる。谷上社寺工業の川田徳宏社長は「日本建築の曲線を優美に表現できるのは、檜皮ぶき。在りし日の姿に戻すだけでなく、少しでも長持ちする屋根にしたい」と話す。

同神宮によると、檜皮を敷いた後、屋根の端を覆う鬼板や銅板の塗り直し、金具工事などを行い、作業の終了は来年9月の見込み。24年以降は、楼門の朱の塗り直し工事や金具などの修理に移る。