山水画の系譜たどる 日光・小杉放庵美術館所蔵作品展 意味、息づく思想など紹介

下野新聞
2022年3月7日

 【日光】近代から現代の山水画の系譜をたどる所蔵作品展「山水百景」が、山内の小杉放庵(こすぎほうあん)記念日光美術館で開催されている。放庵らの作品を通じて、山水画に込められた意味や現代に息づく山水の思想などを探る。同館の清水友美(しみずともみ)学芸員は「ご覧になった人の心に残る一景が見つかればうれしい」と話している。

 展示は4章構成。会場には放庵のほか、大山魯牛(おおやまろぎゅう)や市出身の入江観(いりえかん)さんらの作品や資料約60点が並ぶ。1、2章では、放庵や魯牛の近代の作品から筆致や色使いなどさまざまな視点で山水画を紹介しているほか、山水という言葉に着目している。

 絵画では画家の理想の景色を描いたものが山水とイメージされているが、明治から大正にかけては現在の風景画と同じ意味で使われていたという。

 放庵が学んだ画塾・不同舎の画家たちが何げない風景を描いた「道路山水」と呼ばれる作品群から、今日の風景画との関わりについて解説。清水学芸員は「当時は名も無き風景を描くことは珍しく、道路山水は今日の風景画の先駆け的な存在」と話す。

 画中に描かれた人物に注目した3章では、作品に込められた意味も探っている。放庵の「桃源春色」は、桃源郷の入り口と思われる巨大な岩の前に立つ漁師を描いた作品。中国で生まれた山水画には漁師やきこりなど平凡な人物が描かれており、そこには古代中国人が憧れた俗世を離れて生活する「隠逸(いんいつ)」の思いが込められているという。

 最後の4章で現代に息づく山水の思想にも迫っており、入江さん作の「湖畔陽洩(こはんようえい)」などからは、普遍性を意識した現代画家の山水観がうかがえる。

 4月3日まで。午前9時半~午後5時(入館は4時半)。月曜休館。入館料は一般730円。19日午前11時から学芸員のギャラリートーク。(問)同館0288・50・1200。