写真通し「家族」感じて 浅田政志さん個展 19日から水戸芸術館

茨城新聞
2022年2月17日

■茨城県内在住者撮り下ろし 言葉付けて思い表現

家族を撮り続ける写真家、浅田政志さん(42)の個展が、2月19日から水戸市五軒町の水戸芸術館現代美術ギャラリーで開かれる。茨城県内の家族を撮り下ろした写真のほか、制作の原点から最新作までを一挙公開する。浅田さんは「家族写真を通じて、自分の『家族』を感じてもらえたら」と話す。

■展示数240点

タイトルは「浅田政志 だれかのベストアルバム」。総展示数は約240点。本人の個展では最大規模となる。

目玉は、自身の最新作「私の家族」の茨城版。県内の家族を撮った作品で、今展が初公開。茨城県は大阪版、福岡版に続くシリーズ3カ所目となる。昨年夏にモデル(=被写体)となる家族を県内在住者から募り、選ばれた5組を同10月に撮影した。

「私の家族」は、写真に言葉を付けているのが特徴。「家族の写真だけでは、語り尽くせない部分もあると感じていた」

今展でもモデルによる400字程度の「思い」を加え、「写真」と「言葉」のセットで表現する。「写真は、写真だけで見せる『王道』もあるのだが、写真と言葉を合わせることで、思いを見た人に伝えることができるのではないかと思い、挑戦してみたかった」

■全活動に迫る

同展では、映画の原案になった「浅田家」をはじめ、過去の作品全シリーズを紹介。自身の活動を言葉と一緒に紹介し、「家族」と「記念写真」のテーマに迫る。東日本大震災後、岩手県野田村で、津波によるがれきの中から見つかった写真を洗浄し、持ち主に返却する活動の現在も伝える。

「新型コロナ禍では、家族写真を撮影するいいタイミングではないかと思う。写真の良さは、撮った後にプリントに残って30年、50年たっても、その時を感じ、思いを巡らせることができることだと思う」

会場内には記念写真を撮るスペースも設ける。「見に来た人の新しい記念写真が生まれたらいいなと思っている。そこで撮影してもらえるとうれしい」

■児童らと交流

同展開催が縁で、水戸市内の小中学生と交流した。応募のあった学校へ出向き、クラスの集合写真を撮影する企画に参加した。

水戸芸術館による浅田政志「とびっきりの記念写真」河和田小学校での様子=水戸市河和田町(写真提供・水戸芸術館)

 

「集まって撮るだけではなく、みんなに『どうやって撮りたいか』『どうやったら自分たちの今が(写真に)表れるか』というお題を話し合ってもらい、それを聞いて撮影した」。写真は学校へ提供し、児童生徒の元にも届くようにする予定という。

取材ではコロナ感染対策としてマスクを着用。写真撮影時のみ外し、笑顔で個展に向けての抱負を話した。「今年の開催に向けて、数年かけて準備をしてきた。コロナ感染拡大が心配だが、家族写真という身近な媒体でもあるので、多くの人に見てほしい。家族で見に来てもらえたら」

一般900円、高校生以下・70歳以上など無料。午前10時~午後6時。月曜休館(3月21日は開館し、翌日休館)。5月8日まで。

■あさだまさし

1979年三重県生まれ。自らも被写体となった写真集「浅田家」(赤々舎)で、写真界の芥川賞といわれる木村伊兵衛写真賞(2008年度)を受賞。作品「浅田家」「アルバムのチカラ」を原案にした映画「浅田家!」が二宮和也さん主演で20年10月に公開された。昨年、東京からUターンし、地元の津市で暮らしている。