歴史画の歩みと魅力 茨城・五浦美術館で企画展 暁斎や観山ら23点
歴史上の出来事や物語を題材に描く「歴史画」は、日本画の重要なテーマとして明治期以降、多くの画家たちに継承されてきた。そんな歴史画に注目する企画展「いにしえを描く」が2月6日まで、茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館で開かれている。河鍋暁斎や松本楓湖をはじめ、日本美術院で活躍した画家による23点を展示し、歩みや魅力に触れる。
展示は「道釈人物画」「歴史・物語」「仏画」の3部で構成されている。
「道釈人物画」は、道教と仏教(釈)に関する人物画の総称。中国では悟りを開いた人物として風貌怪異に描かれることが多く、時代ごとに名手が生まれてきたという。日本では禅宗の伝播(でんぱ)とともに鎌倉時代以降さかんになり、室町時代の雪舟や雪村が水墨画の名品を残した。
大観に見いだされ、独自の画風を確立した小川芋銭の作品のうち、明治から大正にかけて描かれた道釈人物を紹介。中国の仙人たちの伝記を題材にした「黄初平」と「石非羊」。同じ画題を異なる視点で描いた二つの作品が、見どころの一つとなっている。ほかに茨城県美術館で初公開となる笠間市出身の桜井華陵「竹林七賢」などがある。
続く「歴史・物語」は、単に歴史上の人物や事件を取り上げるのではなく、西洋画の技法や発想に学ぶという新鮮な着想が重んじられた。
明治期、岡倉天心らがその重要性を説いたことが契機となり「歴史画」としてのジャンルが確立。雁(がん)の親子が飛ぶ姿から、実父が討たれた境遇を悲しむ兄弟を描いた木村武山「曾我兄弟」や、中国古代に俗世間を避けて竹林に集った7人の隠者を描いた下村観山「竹林七賢図」などが並ぶ。
仏像や仏教説話を描いた「仏画」では、名手といわれた木村武山を中心に展示した。法然と観音菩薩(ぼさつ)を幻想的に表現した「法然上人」や、美しい色彩の「不動明王」など秀作がそろう。古河市出身、河鍋暁斎「羅漢図」は、悟りに達した仏教修行者をスピード感あふれる力強い筆致で描いた。
各作品に簡単な説明文つき。午前9時半~午後5時。月曜休館。