歌川国貞の錦絵 存分に 那珂川・広重美術館で企画展 「今源氏」54点など展示

下野新聞
2022年1月18日

 【那珂川】馬頭の町馬頭広重美術館で14日、企画展「浮世絵!源氏ものがたり」が始まった。改修工事のため昨年11月から休館していたが、約2カ月ぶりに開館した。源氏物語を下敷きとした戯作(げさく)に基づく、歌川国貞(うたがわくにさだ)(3代目豊国(とよくに)、1786~1864年)の手による中判錦絵のシリーズ「今源氏錦絵合(いまげんじにしきえあわせ)」全54点などを展示。歌川広重(ひろしげ)、歌川国芳(くによし)と並ぶ江戸後期の人気絵師の画才ぶりを存分に楽しめる。2月13日まで。

 国貞は10代半ばで初代歌川豊国の門下に入り、20代の若さで絵師としてデビュー。特に美人画、役者絵で絶大な人気を博した。戯作者柳亭種彦(りゅうていたねひこ)が源氏物語を翻案し、1829年に初編を出版した長編合巻(ごうかん)「偐紫(にせむらさき)田舎(いなか)源氏(げんじ)」の挿絵を担当したほか、挿絵とは別に52~54年にかけ、多色刷りの浮世絵木版画(錦絵)の連作として今源氏錦絵合を制作した。

 偐紫田舎源氏は源氏物語の舞台を平安から室町時代へと移し、足利将軍の子、足利光氏(あしかがみつうじ)が好色遍歴を装い、失われた足利家の宝の行方を追い、家の平穏のために奔走するストーリー。当時のベストセラーで、展示作「今源氏錦絵合 須磨 十二」は、背後から奇襲する刺客を光氏が扇で撃退する様が描かれている。

 企画展は、一連の作品をまとめて販売した際の袋や端書き(序文)、源氏物語に着想を得た別作家の作品なども含め計67点を展示。また、歌川広重の作品など14点を紹介する「藤作(とうさく)と広重」も同時開催している。桜井貴基(さくらいたかのり)学芸員は「物語の内容が分からなくても色彩の豪華さ、躍動感ある人物の動きなど、楽しめる部分は多いはず」と話す。

 14日来館した宇都宮市、団体職員男性(54)は「想像以上に色鮮やかで精彩。現代のエンターテインメントに通ずる文化が江戸時代にあったことがうかがえ興味深い」と話していた。

 23日から一部作品を入れ替える。2月12日午後1時半から同館初代館長稲垣進一(いながきしんいち)さんの講演会「北斎(ほくさい)と広重-風景画の双璧」を開催。入館料大人500円、高校・大学生300円。月曜休館。

 (問)同館0287・92・1199。