《旬もの》ナシ一筋半世紀 小田部梨園(茨城県下妻市) 「おいしい」の声励みに

茨城新聞
2021年8月30日

シャリッとした食感と爽やかな甘さ、みずみずしさが味わえるナシ。夏から秋にかけて旬を迎え、茨城県は全国第2位の生産量を誇る。

8月中旬、県内有数の産地の一つ、下妻市にある小田部梨園を訪れると、日差しを浴びたナシが枝に連なっていた。同月下旬から収穫が始まる「豊水」だ。同園代表の小田部明義さん(69)は「甘みの中に少し酸味がある。食感は柔らかめで水分が多い」と特徴を挙げる。

小田部さんは豊水のほかに、幸水やあきづきなど五つの品種を7カ所の畑で育てる。収穫時期は6月下旬から9月下旬までだが、肥料の補充や摘果など、ナシ作りに関する作業は年間通して続く。

「特に剪定(せんてい)と授粉に力を入れる」と小田部さん。収穫後の11月から翌3月上旬までは、はさみを手に古い枝葉を切っていく。こうすることで、新しい枝の先まで栄養が行きわたるようになる上、実に日光がよく当たり、大きくて味のよいナシになるという。

4月上旬から始まる授粉作業の「花合わせ」は、昔ながらの手作業で行う。長い綿棒のような道具を使い、小田部さんの家族とアルバイトの計5人で数日かけ、めしべに花粉を付けていく。時間と労力がかかる作業だが、「おいしいナシを提供したい」と丁寧に取り組む。

小田部さんが会長を務める下妻市果樹組合連合会は、100戸以上の生産者が所属する。摘果や剪定の手順を確認する講習会を年4回開くほか、肥料や農薬に関する決まりを設けるなど、生産者全体で高品質かつ安全なナシの栽培に励む。「皆が同じ目線で、質の高さを保つためには欠かせない」と話す。収穫されたナシは目視で選別された後、糖度や心腐れなどの品質を見分ける光センサーでさらにより分けられ、出荷される。

収穫したナシは目視の後、レーンに載せられ光センサーでより分けられる

 

父親の後を継ぎ、50年以上にわたって“ナシ作り一筋”で歩んできた小田部さん。自然の恵みに感謝する一方、時には台風や降ひょうの被害を受けるなど、自然相手の厳しさを突き付けられることも少なくなかった。それでも「おいしいと言われると励みになるし、うれしい」。食べた人の笑顔を思い描き、日々ナシ作りに情熱を注ぐ。

メモ
下妻梨共同選果場
▽JA常総ひかり下妻第一梨選果場の住所は、下妻市大木1675。同第二梨選果場の住所は同市数須209
▽販売時間は午前8時~午後3時、9月末まで販売
▽第一梨選果場 (電)0296(43)4174

第二梨選果場 (電)0296(44)5982

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