収蔵庫の「お宝」40年の成果紹介 県立博物館 27日まで企画展 学芸員“推し”逸品90件

下野新聞
2021年6月13日

 県立博物館は今春の新収蔵庫棟本格稼働を記念し、同館の資料収集活動を紹介する企画展「収蔵庫は宝の山!」を27日まで開催している。開館以来約40年にわたって集めてきた70万点の中から、学芸員自慢の逸品約90件を一堂に展示。多様な資料を収集・保管する博物館の役割や活用事例とともに、これらを次代に引き継ぐ大切さを伝えている。

 同館は考古、歴史、民俗、美術工芸の人文系4分野と地学、植物、動物の自然系3分野を擁する総合博物館。第1章では、各分野の学芸員ら“推し”の多彩な品々が並ぶ。

 「宇都宮氏軍旗」は、室町時代の合戦で実際に使用されたもの。那須氏に敗れ奪い取られてから数奇な運命をたどったが、2017年の企画展での借用を機に、京都の所蔵者から同館に寄贈され、約470年ぶりに“帰郷”したという。

 軍旗や絵画、屏風(びょうぶ)などの展示スペースは、劣化を防ぐために明るさが抑えられており、「他と比べることで管理の仕方の違いを知ってもらえる」と星直斗(ほしなおと)学芸部自然課長。

 130年以上前のニホンカワウソの胎子(日曜日のみ公開)、世界で同館だけが収蔵するヤミゾヤマミミズなど珍しい標本のほか、1千万年前は鬼怒川が海だったことを示すクジラ化石の産状レプリカや本県を代表する希少なキノコ「アカヒトデタケ」の色や質感を忠実に再現した拡大模型なども目を引く。

 同館収蔵品約70万点のうち、40万点を占める昆虫からは、本県では絶滅したオオウラギンヒョウモン、新種発表の際に基準となったモムラオオズナガゴミムシの標本などが並ぶ。

 「資料群」を見せる後半では、佐野市にあった越名沼が湿性植物の宝庫だったことが分かる植物標本群、「五九豪雪」と呼ばれる1983~84年の記録的な大雪で死んだ日光のニホンジカの238個体の骨格標本など、地道な収集活動を伝えている。

 本県唯一の国指定重要有形民俗文化財である野州麻生産用具は工程、犂(すき)などの民具は変遷が分かるようにまとめたり、境や辻(つじ)に置かれたユーモラスな魔よけ、材質や形がさまざまな土瓶コレクションなど、人々の思いや身近な歴史をたどることができる。

 ほかに、博物館がどのような資料を集め、保管しているのか、資料の収集方針や収蔵方法、使用収集棚の種類などを説明した第2章、常設展や企画展、移動博物館など規模や趣旨の異なる収集資料の活用事例を取り上げた第3章の構成。

 星課長は「高価で珍しいものだけが宝ではない。先人から引き継いだものが持つ物語や、それを未来の人々に伝える博物館の役割を知ってほしい」と来場を呼び掛ける。

 【ズーム】新収蔵庫 1982年の開館以来、資料の増加などで収蔵環境が悪化したことから、2018年に職員駐車場などがあった場所に着工。20年3月に地下1階、地上3階建て、延べ床面積2360平方メートルの新収蔵庫棟が完成した。今年4月から本格的に使用を開始した。

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