水戸出身・高橋箒庵の功績 「大正名器鑑」刊行100年 南青山・根津美術館で企画展 

茨城新聞
2021年6月12日

水戸市出身の著名な茶人、高橋箒庵(そうあん)(1861~1937年)が編さんした「大正名器鑑(めいきかん)」の刊行100年を記念して、東京・南青山の根津美術館は企画展「茶入と茶碗─大正名器鑑の世界─」を開いている。同書で示した名品の鑑賞ポイントを示しながら、大著の成立過程を概観。合わせて同館所蔵のコレクションを展示している。会期は7月11日まで。

古くから茶人に大切に扱われてきた茶入(ちゃいれ)と、手に取って親しむことで愛着が増す茶碗(ちゃわん)。1921年から刊行が始まった「大正名器鑑」(全9編11冊)は、茶入と茶碗の名品875点の銘の由来や分類、寸法、付属品、伝来、実見記、写真などの細かな情報を網羅。鑑賞ポイントを明確に示したことで、茶人のための大名物図鑑というべき役割を果たしてきた。

同書を編さんした高橋箒庵(本名・義雄)は、水戸藩士の四男として生まれ、慶應義塾大を卒業後、新聞記者として活躍し、後に実業家としても大成した。50歳で引退して以降は、茶の湯を中心に趣味の世界に生き、同書を含め多くの著書を残している。

一方で、同館のコレクションの基礎を築いた初代・根津嘉一郎(1860~1940年、号・青山(せいざん))は、東武鉄道などの経営に携わり「鉄道王」と呼ばれた経済人。箒庵とは邸宅を行き来するなど、茶の湯を通じて親しい関係にあった。同展では、同書の刊行記念行事で使われた作品を展示し、2人の厚い友情にも光を当てる。

会場には、同書の第1編冒頭に置かれる重要文化財「肩衝(かたつき)茶入」をはじめ、同「堅手(かたで)茶碗」「雨漏(あまもり)茶碗」など茶友をねぎらう名品の数々を展示。人となりや交友関係を探る「茶人たちの手紙」、雨や水にちなんだ道具を取り合わせ、雨の季節に心を寄せる「梅雨時の茶」を同時開催する。

重要文化財「堅手茶碗」(銘 長崎、朝鮮・朝鮮時代、16~17世紀、根津美術館蔵)

 

◇開館時間は午前10時~午後5時。入館料はオンライン日時指定予約で一般1300円、学生1000円、中学生以下無料。月曜休館。2時間前までに同館ホームページから日時指定券を購入する(クレジットカード決済のみ)。問い合わせは同館(電)03(3400)2536(代表)。

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