《ググッと県西・記者探訪記》境町 建築家・隈氏とコラボ 5施設回遊、まちづくり 人と歴史、地域つなぐ 

茨城新聞
2020年9月27日

世界的な建築家・隈研吾氏とコラボしたまちづくりを進める境町。隈氏が手掛けた3施設が8月下旬から9月にかけ、新たにオープンし、これで計5施設が利用開始となった。町は、来年4月にも6施設目となる「干しいもカフェ S-CAFE(エス・カフェ)」を開店させる方針で、これらの施設をカップルや家族連れなどに回遊してもらい、地域振興に結び付けたい考え。隈作品を巡る境の旅に出掛けてみよう。

▽連動
境町には、道の駅さかいの建物内にある「さかいサンド」や同敷地内にある「さかい河岸レストラン 茶蔵」をはじめ、8月26日にオープンした「境町地場産品研究開発施設 S-Lab(エス・ラボ)」と「境町粛粲寶(しゅくさんぽう)美術館 S-Gallery(エス・ギャラリー)」、9月16日に落成した「国際交流記念館 モンテネグロ会館」の計5施設が存在する。

隈研吾氏がデザインした「さかい河岸レストラン 茶蔵」=境町

建物の随所に国産の木材を使い、デザイン性に富んだ各施設を連動させながら人と歴史、地域をつないでいく。来町者は「道の駅さかい」の駐車場に車を止め、美術館や研究開発施設、干しいもカフェ(計画中)などを歩いて回る。

▽人の流れに変化
「道の駅さかい」から徒歩10分圏内にある美術館と研究開発施設。2施設に面する時計店の店主、中山正男さんは「隈さんが手掛けた施設ができてから若い人が多くなり、人の流れが変わった」と断言する。隣接する境香取神社やパン販売店「さかい河岸ベーカリー」にも若い女性たちが立ち寄るなど、商店街や町全体ににぎわいの相乗効果が生まれつつある。

一方で、隈氏が手掛けた建物の中で唯一、離れた場所にある「モンテネグロ会館」は、道の駅から車で5分ほど離れた首都圏中央連絡自動車道(圏央道)境古河インターチェンジ(IC)の近く。周辺には、境町の魅力を伝えるPRブース「S-CROSS(エス・クロス)」を店内に備えた飲食店「8代葵カフェハワイ境店」や町の文化・スポーツ施設、宿泊施設などが軒を連ねる。商店街の再整備だけでなく、境古河IC周辺を開発することで町は、宿泊を伴った観光客の呼び込みに力を入れる。

▽友好の証し
一風変わった名称の「モンテネグロ会館」は、幕末期に境町出身の関宿藩士・野本作次郎がペリーと共に来航したアルゼンチン人船員のモンテネグロを応接した縁で双方の交流が始まり、1937年にモンテネグロ家から野本家に寄贈された。同町とアルゼンチン共和国の友好の証しとして重要な役割を担う会館で、今回の改築に伴い館内にカフェなどを新設した。

隈氏は「すでに多くのファンが『隈研吾マップ』を見ながら施設を回ってくれている。五つの施設はそれぞれの機能に応じて、デザインの変化や個性を出しているので、建築デザインを学ぶ人だけではなく、幅広い年齢の方に施設を回っていただきたい」と話した。今秋には、自動運転バスの運行開始も予定されており、町内各観光施設へのアクセスも便利になる。

地図を開く 近くのニュース