湖畔の茶室 再生 潮来の旅館 かやぶき

茨城新聞
2018年4月10日

潮来市永山の旅館「銚子屋」敷地内にあるかやぶきの茶室「懐山荘得月庵(かいざんそうとくげつあん)」が修復され、8日、完成お披露目記念の茶会が開かれた。50年以上前に京都から移築された茶室で、長年使われていなかった。修復を手掛けた一般社団法人国際里山文化協会代表理事で茶道家の椿邦司(くにじ)さん(57)は「かやぶきで、霞ケ浦のほとりにあるという非常に素晴らしい茶室。今後、活用法を考えていきたい」と話している。

得月庵は、4畳半の茶室で、かやぶき屋根が特長。茶室の二方を取り囲むように土間を備え、室内から霞ケ浦を眺めることができる。

銚子屋の先代女将、小林美代子さん(85)によると、もとは京都出身の政治家・芦田均元首相が持っていた茶室だった。美代子さんの夫で画家だった晟(あきら)さんのつてにより、50年以上前に京都から現在の場所へ移築されたという。

移築された当初は週1回、茶道教室が開かれるなどして使われていたが、ここ20年はほとんど使われることがなかった。また2011年3月の東日本大震災によって近くの築山や灯籠も失われた。夫の思い入れが強い建物だっただけに、美代子さんは使ってもらえる譲渡先を探していたが、老朽化により移築が難しいことなどから難航した。

そんな時、得月庵の存在を知った椿さんが現地を訪れ、修復を申し出た。「(貴重な)かやぶきの建物で、ロケーションも素晴らしい。この場所に茶室をぜひ残すべきだ」と椿さん。今年2~3月にかけ作業を行った。得月庵について「土間がある茶室は珍しい」と評価し、「外を見せるための構造で、京都に建てられた時も景色の良い場所にあったのだろう」と推測する。

記念の茶会には、市内外から約50人が訪れ、茶室と野だての2席でお茶と、霞ケ浦を望む景色を楽しんだ。美代子さんは「本当にしっかり直していただいて、お客さんも夫も喜んでくれると思う」と感謝を口にした。椿さんは「外国人などに向けたインバウンドのきっかけになれる建物。潮来はもちろん、北総地域、鹿行地域の活性化のきっかけになれば」と今後の活用に期待を寄せた。

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