つくば 高エネ研のサイエンスカフェ 「科学身近に」目指し100回

茨城新聞
2018年5月29日

■自由に質問、参加者好評
素粒子研究を行うつくば市の高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)が、市民向けに2015年から同市内で続けている「サイエンスカフェ」が100回目を迎えた。「科学を身近に」を目指し、一方的な講義方式でなく、気軽に立ち寄れるカフェ方式が好評で、毎回20~30人が集まる。会場では「ニュートリノ」「不確定性関係」といった物理学の難解な用語が飛び交うが、参加者は終始笑顔で自由に質問をぶつける。研究所と市民をつなぐ役割を担い続けている。

「ミューオンは1秒に1個、宇宙から降り注いで手のひらを突き抜けている。ニュートリノは数百兆個にもなる」。最小の物質、素粒子の種類や特徴について講師が話した内容に、参加者から感嘆の声が上がる。すかさず「でも素粒子はもう壊せないとなぜ分かったのか」と質問が飛び、講師が「50年くらいかけて調べてきたので」と答えると、笑いが起きた。

100回目となった25日のカフェには、約30人が参加。高エネ研の三原智教授が素粒子「ミューオン」をテーマに話すが、参加者がいつでも質問をぶつけるため脱線するのもしばしば。それがまた参加者の興味を引き付ける。

ほぼ毎回、友達と参加する県立並木中等教育学校4年、柳田洸希さん(15)は「アットホームな雰囲気で、何回も聞いていると難しい物理学も分かる気がする。もっと勉強したい」と話した。土浦市の男性(65)も「知的な欲求を満たしてくれる」と満足顔だった。

カフェは15年11月に、高エネ研広報室の高橋将太さん(31)が企画して始まった。毎週金曜の午後7時から、つくば駅前の「BiViつくば」2階で開いている。参加無料で、コーヒーや菓子を片手に自由に参加できるとあって、中高校生から年配者まで年代は幅広い。

講師は高エネ研の若手研究者を中心とし、月ごとにテーマを替える。ノーベル物理学賞に輝いた梶田隆章東大教授の研究テーマ「ニュートリノ」をはじめ、「最近話題に上がった科学のネタを取り上げ、関心を持ちやすくしている」(高橋さん)。

当初の数カ月こそ参加者が数人だけと少なかったが、「30分でわかった気になる宇宙創生の謎」「微分?なにそれおいしいの?」などとテーマに工夫を凝らし、興味を引きやすい話題を提供することにより、口コミで参加者が増え続けた。

高橋さんは「研究所と市民を近づけるため、続けることを目的でやってきた。教えるというより一緒に考える感じ」と100回を数えたカフェを振り返る。

その上で「市民の関心は素粒子だけではない。他の研究機関とも連携して幅広い話題を提供できればいいのでは。あと10年ぐらいは続けたい」と先を見据えた。

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