《旬もの》トマト(茨城・行方市) うまみ凝縮、程よい酸味

茨城新聞
2023年6月23日

生で食べても調理しても、用途が広いトマト。真っ赤な色で親しまれ、大玉、中玉、ミニトマトと、大きさや色、糖度の違いで次々に新品種が登場している。

JAなめがたしおさい麻生地区ハウス部会副部会長の東山清三さん(58)=茨城県行方市=は、フルーツ感覚で食べられる甘さに、酸味を加えたオリジナル品種「キストマト」を生産する。完熟トマトの草分け「桃太郎」の純正品種で、東山さんは32年前からキストマト一筋だ。

全て土耕栽培。水分や液肥を極力控えて適度にストレスを与え、本来の大玉サイズを小ぶりに育てる。手間や技術が必要となるが、その結果、皮が硬く張りがあり、水分やうまみをぎゅっと凝縮するという。

同農協でキストマトを生産するのは、現在3人。東山さんは大型ハウス2棟とパイプハウスを合わせた55アールで栽培している。約4000本の苗が整然と並んでおり、1本の苗には下から順に1~7段目まで実がなる。今年は2月末に苗を植え、先月15日に初出荷した。

出荷を待つキストマト

 

糖度は8~13度と高く、味を左右するのは甘酸っぱさにある。「甘いだけではつまらない。程よい酸味があってこそ、さっぱりとしておいしい」と東山さん。食べやすさを追求するフルーツトマトが増える中、差別化を図り、オリジナルの味を守ってきた。

長さ60メートルの大型ハウスは場所により日の当たり方や温度、湿度が違う。朝、昼、夕、夜の4回とその合間、多いときには日に7回ほど、ハウスに足を運んでいる。天候や気温を踏まえてその都度調整し、特に土の状態に気を配る。元気に育つ条件に「根の張り」を挙げる。

上部の濃い緑色はおいしいトマトの証拠

 

夏季の出荷は7月末ごろまで続く。ハウス内では、うっすらと赤いトマトや緑色のトマトが見事に実っている。家族3人で出荷の1日前に収穫し、常温で寝かせて追熟させた後、箱詰めをして同農協へ。県外へと運ばれる。

1本の苗でも取れる時期や実った場所で味に差が出るという。「違いを踏まえて選別することで、お客さんの好みや要望に応えることができる」。キストマトを熟知する東山さんの言葉に、同農協麻生営農経済センターの代々城拓歩さん(26)は「名人ですからね」と信頼を寄せる。

■メモ
キストマト
▽JAなめがたしおさい麻生営農経済センターの住所は、行方市島並857の2
▽出荷シーズンは5~7月と、12~3月。
▽問い合わせは同(電)0299(72)1884