《旬もの》寒シジミ(茨城・涸沼) 身が締まり高い人気

茨城新聞
2022年1月27日

茨城県茨城町や大洗町、鉾田市などにまたがる涸沼。太平洋につながる涸沼川によって淡水と海水が混じり合う汽水湖で、ヤマトシジミが名産だ。ブランド「ひぬまやまとしじみ」として市場をはじめ、広く定評がある。旬は年2回。12~2月の寒シジミと6~8月の土用シジミは、特においしい時期といわれている。

大涸沼漁協組合によると、寒シジミは冬眠に向けて栄養を蓄える上、寒さで身が締まるため、味がよく、人気が高い。その一方、冬場は冬眠で砂地に潜るため、収穫量は減少。最盛期の夏場に比べて、10分の1ほどになるため、稀少だという。

涸沼産の寒シジミ

 

 

 

同組合のシジミ漁は、資源保護のために動力を使わない、人力による「手がき」が特徴。1月中旬、漁を始めて30年以上のベテランで、同組合長の坂本勉さん(70)の姿が涸沼川にあった。坂本さんはカッターと呼ばれる金属製の籠がついた、5メートル以上ある長ざおを水中に沈めると、舟の縁に立った。強風の中、体を反らせながら川底をかいていく。しばらくして、引き上げたさおを振って水気を切ると、カッターの中には、黒々としたシジミが輝いていた。

「漁は、風の強さや吹く方向、潮の満ち引きや流れを見極めることが大切」と坂本さん。それらを見定めた上で、最適な場所を日ごとに決めている。潮の流れが強いところでは、流されないようさおを地面に差し込んで耐え、冬場で風が弱く、浅い場所では、胸まで水に漬かって地面をかく。「簡単そうに見えるが、実は大変」と話す坂本さんの指には硬いたこが並ぶ。長年、さおを押さえてきたためにできたもので、「漁を始めたばかりのころは、手がほてって眠れなかったよ」と振り返る。

採れたシジミは、交じった石などを取り除くために機械でふるいにかけられた後、石の板の上に落とすなど、殻の音の違いで身が入っているかを確認される。選別後はスーパーや組合員が営む店先に並べられ、各家庭の食卓や飲食店のテーブルに上る。

同組合では、貴重な資源であるシジミを守るため、手がきのほか、カッターの網目を12ミリに定めるなどして乱獲を防いでいる。シジミの産卵から育成までを手掛け、稚貝を放流する活動も実施し、守ることに加え、育てる漁業にも取り組む。「これからも自然の恵みに感謝しつつ、シジミ漁に励んでいきたい」

■メモ
ひぬまやまとしじみ
▽大涸沼漁協の住所は茨城町下石崎1652
▽問い合わせなどの受け付けは、平日午前8時半~午後5時15分。
▽(電)029(293)7347