《旬もの》新茶の季節、「古内茶」、風味豊かに 城里・高安園

茨城新聞
2020年5月25日

茶摘みを目前に控え、きれいな緑色の新芽がそよ風に揺れ、陽光を浴びて輝く。まるで緑の海のよう。ここは、城里町にある高安園の茶畑。

山あいに藤井川が流れる古内地区で、特産品の「古内茶」の栽培から加工、販売までを一貫して手掛ける茶園の一つ。高安達夫さん(60)、智子さん(60)夫妻が営む。

同園の自慢は「豊かな香り、渋味と甘味のバランスの良さ」。達夫さんは「摘み遅れると葉が硬くなり、品質が落ちてしまう」と、摘採のタイミングを計りながら、この時季、茶摘みや新茶作りに忙しいという。

古内茶は「さしま茶」「奥久慈茶」とともに茨城県三大銘茶に数えられ、徳川光圀が味の良さに感嘆して歌を詠んだという逸話も残る。

同園は、共同で製茶業を営んでいた高安さんの父が約35年前、工場と直売所を建て独立。子供の頃から茶作りを手伝っていた達夫さんは、会社員と兼業していたが、40代で茶園の専業となった。

「土作りが大事」と茶専用の肥料や油かすなどの有機肥料を施し、約2ヘクタールを栽培する。

収穫した生葉はその日のうちに機械で蒸し、もみ、乾燥など幾つもの工程を経て製茶する。「蒸し方で味の7割が決まる」と達夫さん。茶葉の蒸し時間などの違いで、浅蒸し、深蒸しなどに分けられ、色や味わいなどが変わってくる。「蒸しが強くなると、葉は壊れ細かくなるが、茶は出やすく味わいはまろやかになる」。同園の主力は深蒸し。「蒸し加減が違う茶葉を交ぜることで、2煎目、3煎目と楽しんでもらえるようにしている」と話す。

製茶工場

ペットボトルの手軽さが受ける時代。「急須のない家庭もある」と、水や湯を注ぐだけですぐ飲めて、茶葉の始末も要らない粉末茶も作る。夫妻は「夏は冷茶でどうぞ」と勧める。2018年から作り始めた紅茶は、「後味がすっきりして、和食にも合う」と好評だ。

笑顔のもてなしも同園の魅力。智子さんが中心となって、自慢の茶とともに、今は新型コロナウイルスの影響で控えているが、タケノコやフキの煮物など季節の食材を使ったお手製のお茶請けで接客する。「対面販売は続けていきたい」ともてなしを大切にしている。茶は町内の農産物直売所でも販売する。

■メモ
高安園
▽住所は城里町下古内314の1
▽(電)029(288)4801

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