下野薬師寺を再評価 17日から 県立博物館40周年展 鑑真との関係たどる 国宝仏像など160件公開

下野新聞
2022年9月11日

開館40周年を記念した特別企画展「鑑真和上(がんじんわじょう)と下野薬師寺~天下三戒壇でつながる信仰の場」が17日、県立博物館で開幕する。古代下野の仏教文化を象徴する名刹(めいさつ)「下野薬師寺」(下野市)を、国宝指定の仏像や古文書をはじめ約160件の資料で再評価。同寺と高僧鑑真との関わりなどを通じ、本県の豊かな歴史と文化を再認識する。10月30日まで。同12日から展示替え。

「国家仏教を支えた三つの寺の一つが栃木県にあったことをまずは知ってほしい」と山本享史(やまもとたかし)主任研究員。同寺の創建は飛鳥時代にさかのぼり、奈良時代には東国で唯一、鑑真による授戒作法を執り行う戒壇が設置された。東大寺(奈良市)、観世音寺(福岡県太宰府市)と並ぶ天下三戒壇である。

山本さんは「当時の朝廷にとっては、ここが東の端。東北の蝦夷(えみし)と戦い、版図を広げる拠点だった」と本県の地理的な特殊性を指摘。加えて、大宝律令に関わるなど中央政府で活躍した下毛野古麻呂(しもつけのこまろ)の人脈や力も大きかったと推察する。

8世紀半ばには、来日した鑑真の弟子でイラン系のソグド人如宝(にょほう)が同寺に来たとの伝承があり、勝道上人(しょうどうしょうにん)、慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)にもつながっていく。

同展は序章、終章を含め7章構成。文献のほか考古、美術の展示で立体的なアプローチを試みる。

鑑真と共に来日した仏師によるものとされる国宝「薬師如来立像」(唐招提寺)は、1本の木から彫り出され、流れるような衣文と異国風の表情が特徴的。能満寺(宇都宮)の薬師如来立像、大関観音堂(同)の菩薩(ぼさつ)立像も均整のとれた顔や衣文、一木造りなど唐招提寺の系譜を感じさせる。

下野薬師寺から出土した奈良時代の瓦は、藤原氏の氏寺である興福寺と同じ文様。同様の文様は溝口廃寺跡(兵庫県姫路市)からも出土しており、奈良、栃木、兵庫と移動した一つの型から生まれた瓦を、実物で比較できる展示は貴重だ。

11世紀後半、下野薬師寺の僧慶順(けいじゅん)が東大寺に援助を求める上申書(国宝)には、訴える窮状とは裏腹に、東国の中心寺院としてのプライドがにじんでいることも興味深い。

展示品の半数は重要文化財などの指定を受けており、鑑真ゆかりの舎利容器などは同館初公開。山本さんは「40年を記念した大掛かりな展示。日本屈指の大寺院だった下野薬師寺、最先端の文化が身近にあった古代下野の姿をぜひ見てほしい」と来場を呼びかけている。

観覧料は一般1250円、高・大生620円、中学生以下無料。