セイウチの化石と判明 那須烏山で発見 県内初、全国でも6例目

下野新聞
2022年8月10日

県立博物館は9日、2019年12月に那須烏山市で見つかった化石が、約1100万年前の原始的なセイウチの仲間の犬歯と判明したと発表した。国立科学博物館などとの共同研究。同時代のセイウチ類の化石発見は県内初で、全国でも6例目と極めて珍しいという。論文を執筆した県立博物館の河野重範(かわのしげのり)学芸員(41)は「当時はセイウチ類が大型化するなど進化をたどる上で重要な時期。分布や進化の過程を知る手掛かりになり、学術的にも大きな意義がある」としている。

県立博物館によると、化石は同市小河原の荒川の河原で発見。大きさは5・1センチほどで、推定体長は3メートル以上と大型。セイウチの特徴でもある上顎の大きなキバは発達しておらず、トドに近い姿だったとされる。

化石が見つかった大金層からは、ヒゲクジラの化石(通称・大金クジラ)や餌となる貝の化石なども出土している。今回のセイウチの化石発見により、当時は冷たい海域だったとみられる。

発見した同市鴻野山、市民団体「なすからジオの会プチェーロ」会員の吉沢時明(よしざわときあき)さん(70)は「サメの歯の化石を調査していた際に見つけ、珍しいかもしれないと思った」と振り返る。同市は地形や地質を守りながら観光や教育に活用する「ジオパーク」認定を目指しており、「豊かな自然と幅広い時代の地層があることをたくさんの方に知ってほしい」と話した。

県立博物館では31日まで特設コーナーを設け、見つかった化石などを紹介。論文は今春発行の県立博物館研究紀要に掲載している。