《食いこ》おしゃらぐキッチン(茨城・常陸大宮市) 人と人つなぐイタリアン

茨城新聞
2022年9月12日

市街地からやや離れた、国道沿いにあるイタリア料理店。オーナーシェフ、五位渕正彦さん(61)は茨城県常陸大宮市に店を構えて5年目。店名の「おしゃらぐキッチン」には、普段の家庭料理に手を加え、ちょっとおしゃれに食事を楽しんでもらおう、という思いが込もる。

幅広い世代が選びやすいよう、20種類のパスタや10種類のピザなど豊富なメニューを取りそろえる。特に力を入れるのがパスタ。もちもち食感の生麺は、ゆで時間が約3分と短く、この間にソースを作らないと麺が伸びてしまうという。「パスタは時間勝負。いかに手際よく作るかが大事」と語る。

地域密着を心がけ、食材のほとんどは同市産や県産を使用する。同市産のジャガイモやオクラが入った「ジェノベーゼ」(1078円)は看板商品だ。時には、近隣住民が育てた野菜を差し入れしてくれることもある。常連客のリクエストで始めた「ふわとろオムライス」(1518円)は1日6食限定。県産卵をたっぷり使い、口コミで人気を呼んでいる。

自家栽培したバジルを使ったジェノベーゼ

 

高校卒業後から店や会社で働き、定年を間近にした56歳で脱サラ。「自分の力で何か新しいことに挑戦したい」と、飲食店経営を目指して水戸市の調理師学校に通い始めた。

料理経験ほぼゼロ。包丁を持つ手もおぼつかなく、10代の学生に交じって悪戦苦闘する毎日だった。苦手な暗記力を補うため誰よりも早く登校して予習復習し、帰宅後はキャベツの千切りやサバの三枚おろしなどを繰り返し練習した。努力した分、できることが増え、「楽しくて充実した学生生活だった」と振り返る。

調理師免許を取得し、卒業後は県内のイタリア料理店に弟子入りし、約3カ月間、朝から夕方までパスタソースを作るなど基礎から学んだ。2018年、実家の酒屋を改装して念願の店をオープン。自らの手で料理を振る舞い、経営する目標を達成した。

「この場所にあって良かったと言われるような店にしたい」。若者からお年寄りまでが集い、食事をしながらくつろぐ地域の拠点をつくる。厨房(ちゅうぼう)に立つ五位渕さんの第二の人生は今、充実している。

■お出かけ情報
おしゃらぐキッチン
▽常陸大宮市野口3493の2
▽営業時間午前11時~午後2時半、午後5時半~同9時(どちらも30分前がラストオーダー。ディナーは要予約)
▽定休日は水曜、第3火曜
▽(電)0295(55)7007