茨城・大子で「ホワイトプリン」考案・竹内恒子さん

茨城新聞
2022年9月2日

 ■苦境乗り越え商品化 素朴で懐かしい味人気

茨城県大子町頃藤、JR水郡線上小川駅前にある「竹内商店」は、一昔前のたたずまいを色濃く残す。看板に「夢と暮らしの雑貨」とあるが店内の様子はうかがえない。白くはためくのぼりには「ホワイトプリン」の文字。中に入って来訪を告げると、奥から店主の竹内恒子さん(64)がにこやかに姿を見せた。

店内にはさまざまな装飾品がぶら下がり、陶器や雑貨類、手芸用品、大子那須楮(こうぞ)の和紙、手作り小物、文具のコーナーがあり、駄菓子も並ぶ。目を転じればレジ横の冷蔵ケースには地元で人気のスイーツ「ホワイトプリン」が並んでいた。

食料品、日用雑貨の店を経営していた恒子さんの祖父・栄さんが「上小川キャンプ場」を久慈川沿いで始めたのは1965年。度々の台風被害を乗り越え、口コミで人気が広がり、愛好者らが全国各地から訪れた。

しかし時を同じくして店の客は徐々に減少し、2000年代にはキャンプ場経営がメインになる。ここで恒子さんは「どうせやるなら自分の好きな店にしよう」と決意。各地の雑貨店を巡り、ファンシー雑貨や便利小物を扱う店に改装した。

何の知識もないまま、「行動すれば結果は出る」と信じて実行したが、客足は伸びず、思い描く結果は出なかった。そんな苦境に追い打ちをかけたのが2011年3月の東日本大震災。客は激減。その夏の水害でバンガローも水浸しになった。

窮地の恒子さんが思い付いたのが昔作ったホワイトプリンの商品化。「何とかしたい」一念で、寒天と牛乳で作る牛乳かんをヒントにスイーツ作りに取り組んだ。

夫の智洋さん(68)や長男の佳久さん(33)と共にキャンプ場事務所に厨房(ちゅうぼう)を造り、保健所から菓子製造業の許可も得て、試行錯誤の末商品化にこぎ着けたのが11年8月のこと。

ホワイトプリンを開発中の竹内恒子さん=2012年ごろ

 

牛乳と生クリーム、砂糖、ゼラチン、寒天と、材料は至ってシンプル。保存料は使わず、全て手作り。弾力ある口当たりはゼラチンと寒天の配合に秘密がある。そしてどこか懐かしい味が人気だ。

これまで続けられたのは「家族をはじめ、いろいろな人の協力のおかげ。53歳でスタートして65歳までは、と思っていたが、最近はもう少し長くできるかな」と考えるようになった。これまでプレーン、カフェオレなど5種類の定番フレーバーのほか、季節限定でアップルやイチゴも開発した。プリンは夜作り、翌朝トッピングする。店は今、金、土、日に開いている。