農村の人々表現 温かみある木版画60点 茨城・筑西のザ・ヒロサワ・シティ

茨城新聞
2021年8月13日

茨城県筑西市出身の版画家、飯野農夫也(1913~2006年)と同時代の作家を紹介する「飯野農夫也と新居広治」展が、同市のザ・ヒロサワ・シティ交流会館で開かれている。筑波山の麓で農作業に励む農民の姿を温かみのある木版画で表現し、「農民版画家」として知られた飯野の作品を中心に、第2次世界大戦直後の北関東を拠点に活躍した版画家を紹介している。飯野農夫也画業保存会が企画した。

飯野は五所村(現筑西市上平塚)出身。上京してプロレタリア美術研究所で学び、帰郷後は一貫して農村に生きる人々の姿を木版画で表現し続けた。東京都出身の新居広治(1911~1974年)も同研究所で学び、戦時中は五所村に疎開。戦後の労働争議や基地闘争などをテーマにした作品で知られる。

同展では2人のほか鈴木賢二(栃木市出身)、滝平二郎(小美玉市出身)など関係作家の作品計60点を展示する。副題の「戦後美術運動の芽吹き」に関する資料も数多く展示され、戦火をくぐり抜けた版画家たちが民主化の機運が高まる中で新しい美術運動を模索する様子がうかがえる。

飯野の息子で画業保存会代表の飯野道郎さん(71)は「戦後の美術運動の一つが筑西を出発点としていたことを広く知ってほしい」と話している。

廣澤美術館の企画展「華麗なる洋画の世界」とタイアップして開催され、会期は12月12日まで(毎週水曜と10月3~7日休館)。入場無料。問い合わせは同美術館(電)0296(45)5601

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