南部杜氏鑑評会 「霧筑波」吟醸酒1位 つくば浦里酒造「2連覇目指したい」
浦里酒造店(茨城県つくば市吉沼)の日本酒「霧筑波」が、全国最大規模の杜氏(とうじ)組織「南部杜氏協会」(岩手県)が主催する「南部杜氏自醸清酒鑑評会」で、吟醸酒の部の首席に輝いた。製造責任者で6代目蔵元の浦里知可良さん(29)は「先輩のご指導のおかげ。結果で恩返しができた」と喜び、夢の2連覇を目指す。同協会によると、吟醸酒の部で茨城県内の杜氏が1位になるのは、記録が残る1975年以降で初めて。
同鑑評会は南部杜氏の酒造技術向上を目的として1911年に始まり、今年102回目。今回は2020酒造年度(20年7月~21年6月)の出来栄えを競った。
4月6~9日に岩手県花巻市で審査があり、全国の蔵元137場から吟醸酒の部に256点(114場)、純米酒の部に244点(108場)が出品された。1次審査で選ばれた優等賞のうち、2次、3次審査で上位入賞を決めた。
浦里酒造店は1877年創業。酒造りに使う筑波山水系の井戸水や、つくば市吉沼の気候などが相まって「すっきりとした酒ができる傾向にある」(浦里さん)。鑑評会では蔵の特徴を生かしつつ、味わいを一層引き出すことに注力した。
「香りが華やかでふくよかな味わい。だけど、切れの良い酒を目指した」と浦里さん。酒米は兵庫県産の「山田錦」、酵母は青リンゴ系の香りを生成する「M310」を使った。酒米は昨年夏の猛暑の影響で固さがあり、酒の原料となる麹(こうじ)造りでは「(酒米を)溶けやすくコントロールするため、例年以上に気を使った」
浦里さんは東京農業大醸造科学科を卒業後、山形県や栃木県の酒蔵で修行を積み、酒類総合研究所(広島県)で酵母菌の研究に取り組んだ。18年秋、浦里酒造店に戻り、翌19年に製造責任者に就いた。
昨年の鑑評会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で1次審査のみとなり、浦里酒造店の霧筑波は優等賞だった。今年は上位入賞が決まるとあって、気合も十分だった。
浦里さんは「鑑評会はF1レースのようなもの。蔵の持っている技術と労力を惜しみなく投入する」と説明。鑑評会で培った経験を市販酒に反映しながら、「夢の2連覇を目指して頑張りたい」と力を込めた。
■2位「久慈の山」、10位「愛友」 茨城県勢の活躍目立つ
浦里酒造店が1位に輝いた南部杜氏自醸清酒鑑評会は、吟醸酒の部の2位に根本酒造(茨城県常陸大宮市)の「久慈の山」、10位に愛友酒造(茨城県潮来市)の「愛友」が入り、今季は茨城県勢の活躍が目立った。
鑑評会では上位入賞のほか、優等賞に吟醸酒の部で8点、純米酒の部で7点が県内から選ばれた。
茨城県勢は近年、鑑評会や品評会で高い評価を得る。県内酒蔵の技術向上や人材育成を支援する県産業技術イノベーションセンターによると、全国新酒鑑評会では2013酒造年度以降、入賞・金賞率で全国平均を上回っているという。
同センターの武田文宣フード・ケミカルグループ長は、前年の12酒造年度が過去最低の金賞率だったため、県内酒蔵の間で「何とかしなくちゃいけないという気持ちが強く出た」と説明。これ以降、品質の良い日本酒を目指し「ポイントを押さえた酒造りをするようになっていった」と述べた。
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