平安期の「銅製経筒」里帰り 土浦市立博物館特別展 東城寺巡る文化紹介

茨城新聞
2021年4月9日

茨城県土浦市山ノ荘地区にある東城寺を巡る歴史文化を紹介する特別展「東城寺と山ノ荘」が、同市中央の市立博物館で開かれている。同地区で発掘された、平安時代の銅製経筒が、所蔵する東京国立博物館(東博)から貸し出され、“里帰り”した。市立博物館は「山ノ荘は古代からの信仰や祭りを伝える歴史の宝庫。魅力を知ってほしい」と話している。

経筒は、関東で最古とされる。常陸平氏の平致幹(むねもと)が比叡山延暦寺の僧と共に東城寺に経塚を築いた。平安時代に末法思想がはやり、経典を納めた経塚が造られた。1891(明治24)年に発掘された東城寺経塚は東日本で最古の一つとされる。出土した経筒は青銅製で、内部には妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)のお経が入っていた。

東博の貸与促進事業に基づき、二つの文化財を展示した。銅製経筒に加え、藤原道長が書き写した最古の埋納経が特別出品された。一緒に出土した和鏡や祭礼の瓶と共に並べられている。

東城寺は天台宗の祖、最澄の弟子最仙によって平安初期に開山。鎌倉時代には真言律宗の僧、忍性(にんしょう)が布教に携わった。市内の東城寺と般若寺に伝わる「結界の石」は忍性の影響下で建てられた。展示物の一つになっている。

東城寺に伝わる中世の風流祭事、流鏑馬(やぶさめ)も紹介。大猿退治の神事で、人身御供に稚児を差し出すという言い伝えだ。「一つ物」と呼ばれる平安から伝わる華やかな衣装を稚児が着るのが特徴。朱色に金彩を施し、頭には花を配したかさをかぶり、山鳥の尾を立てる。一つ物は全国各地で見られ、比叡山の地主神、日吉社の祭礼の流れをくむという。

山ノ荘地区の祭礼で使われる「一つ物」の衣装

 

展示では、一つ物の衣装のほか、馬具、粟(あわ)を奉納する祭礼などを実物や写真を通じて知ることができる。

萩谷良太学芸員は「一つ物、粟の奉納のように山ノ荘地域には数多くの伝統祭礼が今も行われている。経筒を含め、古代からのタイムカプセルとして昔の歩みや歴史を改めて感じ取ってもらえれば」と語った。特別展は5月5日まで。

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