元洋裁学校を美術館に再生 大子 愛好家らの思い結実

茨城新聞
2021年4月5日

茨城県大子町大子にある元洋裁学校の建物が、町民の作品を展示する身近な美術館として生まれ変わった。2019年の東日本台風(台風19号)で浸水被害を受け、一時取り壊しも検討されたが、美術愛好家らの熱い思いで再生を遂げた。

オープンしたのは久慈川近くの「大子ドレメ美術館」。建物正面に洋風の装飾が施された看板建築で、1926年に雑貨店として建てられた。その後、洋裁学校として利用。2019年に台風で被災するまで、地域の人に洋裁を教えたり、ピアノ発表会などの会場として使われていた。

台風で同川が氾濫した際、建物は2メートルの高さまで浸水。町が浸水被害があった一帯にある建物の公費解体を進めたこともあり、周辺住民らの間では「取り壊しもやむを得ないのでは」との見方が広がった。

状況を知った元町職員の佐藤清子さん(64)は建物の購入を決意。自らも絵画制作に親しんでいたことから「町民がいろんな形で作品を展示できる、安らぎと憩いの場にできないか」と考え、改装した。

27日には、同様に台風で甚大な被害を受けたJR水郡線が全線で運転を再開した。同館では再開を記念して、4月25日まで2人展「二人の水郡線」を開催している(3日から土日のみ開館)。佐藤さんの洋画とともに作品を展示する同町の写真家、高瀬一仁さん(53)は「台風被害で失われて初めて気付いた大子の素晴らしい風景を、もう一度見直していただけたら」と来場を心待ちにしていた。

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