《上州食三昧》織都の隆盛を象徴 ソースカツ丼(1)発祥の地 名物発信へ14店で団体

上毛新聞
2019年3月11日

 「カツ丼といえばソース」。そう思い浮かべる群馬県民は多いのではないか。外はサクサク、中はジューシーなカツ。甘辛いたれとご飯の組み合わせがたまらない。「発祥の地」を掲げる桐生では、名物の魅力発信に向けた団体が発足。桐生以外にも、独自のたれを生かしたソースカツ丼の店は県内各地にある。素朴な味は広く愛されている。

 桐生のソースカツ丼は1921(大正10)年ごろ、現在の志多美屋本店(桐生市浜松町)で生まれたとされる。3代目店主の針谷智之さん(56)によると、祖父に当たる創業者の宗吉さんがうな重に着想を得て考案したという。当時流行していた西洋風のカツレツをご飯にのせ、気軽に食べられるよう工夫したのが始まり。流行に敏感な織物の街で、ハイカラな洋食がアレンジされ、愛された。
 素朴な味わいで、冷めてもおいしく食べられる点もヒットの要因だった。1950~60年代の高度経済成長期には織物工場で働く従業員の夜食として人気を博した。織都・桐生の隆盛を象徴するメニューとして定着。現在は市内の飲食店約60店がソースカツ丼を提供する。
 全国でソースカツ丼の元祖を名乗る地域は福井や長野、福島などにもある。昨年10月、長野県駒ケ根市で開かれた全国のカツ丼が集まるイベントには桐生の関係者も招待された。
ネットなどを通して桐生のカツ丼人気は広がっており、飲食店関係者の中で「地域ぐるみで力を入れてPRしたい」との機運が高まった。市内の有志14店は昨年12月、「桐生ソースかつ丼会」を立ち上げた。ソースカツ丼を「秘伝のたれにくぐらせた豚ヒレ肉のカツを白米にのせたもの」と定義。会長を務める針谷さんは「使う豚肉の部位、ソースの味は店ごとに異なる。食べ比べてほしい」と話す。5月にはスタンプラリーを行う予定だ。

 市内には片手で食べられるカツ丼もある。老舗銭湯「三吉湯」内の食堂「桐巨樹」は「ウォークいーとソースカツ」(400円)を創作した。ご飯に豚ヒレ肉を重ねて揚げたものを、和風ソースにくぐらせ、キャベツの千切りをのせた。バーガー感覚で楽しめると人気に。店主の大石直樹さん(48)は「今後も味や見た目に新しさを加えたソースカツ丼を開発したい」と力を込める。
県内では桐生以外にも、古くからの味を守るソースカツ丼の店がある。