《旬もの》鴨安商店(神栖市) 100年の伝統「さくらぼし」

茨城新聞
2019年1月13日

神栖市の鴨安商店は1882(明治15)年創業の歴史ある水産加工会社。波崎や銚子(千葉県)などの漁港で水揚げされた魚を加工する。小型のカタクチイワシを手間暇かけて加工した「さくらぼし」は、地元の名産品として贈答品や古里の手土産としても人気が高い。鴨川充治社長によれば、1912(大正元)年に現在のさくらぼしの原型を作っていたという文献が残っており、100年以上作り続ける「伝統をつなぐ看板商品」で、82(昭和57)年には第21回農林水産祭の最高賞「天皇杯」を受賞した。

「房総沖から常磐沖の前浜で取れるカタクチイワシを使っている」と鴨川社長。魚を漬け込む自家製のたれは、砂糖と塩だけで調整する。煮沸し精製するなどしてつぎ足ししながら使い続けてきたたれは、魚のうま味成分が凝縮された伝統の味。あめ色でつやつやしたさくらぼしを弱火であぶるか、アルミ箔(はく)を敷いたオーブントースターなどで焦がさないように焼くと、上にかかったごまの香ばしさとともに、甘めのたれになじんだ魚のうま味が味わえる。

さくらぼし作りは、イワシの頭と内臓を取って手開きしたり、たれに漬け込んだり、天日干ししたりなどのほぼ全工程を手作業で行うため量産ができない。取材に訪れた日は冬の青空の下、身同士がつかないようにしながら形を整えたり、上下を返したりするなどの作業を丹念に行っていた。鴨川正治専務は「機械乾燥は風圧で乾いてしまう。天日干しは熱で柔らかく熟成しうま味が出る」と話す。

さくらぼしの技術はサンマやサバのさくらぼし(みりん干し)などほかの製品に受け継がれる。2016年の第27回全国水産加工品総合品質審査会で「さんまみりん干 色なし」が主婦大賞、17年の県水産製品品評会で「いわしレモンじめ」が水産庁長官賞を受けるなど数々の受賞歴がある。

昨年は第29回全国水産加工品総合品質審査会で「白のごちそう鯖」がベスト5に入る最高賞の農林水産大臣賞に選ばれた。米麹(こうじ)をベースにまろやかに仕上げている。

製品は工場直売やネット通販を行っており、近隣のスーパーカスミ、都内のデパートや本県のアンテナショップ「イバラキセンス」にも出している。

■メモ
鴨安商店
▽住所は神栖市波崎2468
▽(電)0479(44)0714

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