《旬もの》イチジクの里(桜川市) 美しい里山の特産品に

茨城新聞
2018年9月16日

のどかな里山の風景が広がる桜川市門毛地区は栃木県益子町との県境に位置する。同地区に生まれ育った吉田寛司さん(73)は約15年前、特産品化を目指し独学でイチジクの栽培を始め、同地区の住民らと地域おこしの会を立ち上げた。

果樹園を「イチジクの里」と名付け、生の果実や加工品を、里山散策などで同地区を訪れた人に販売するほか、同町の「道の駅ましこ」に出している。

イチジクは今が旬。約20アールを露地栽培する。イチジク畑の周辺は稲刈りを前に黄金色となった田んぼが広がっていた。果皮が赤紫色の品種が一般的に知られるが、主力品種の「バナーネ」は薄い緑色の果皮が特徴で、熟すほどに紫色が出てくる。9月半ばから10月末ごろまで生食・加工を楽しめる。近隣の飲食店でも使われている。

「鮮度が勝負。熟しすぎると包丁が入らなくなるほど軟らかくなる」ため、完熟の一歩手前で収穫する。「買ったその日に皮をむいて保存してほしい」と、イチジクを詰めたパックには収穫した日時と保存法を記載した注意書きを添える。「繊細で流通には向かないし、個人経営なので数が少なく、近場でしか楽しめない」

色や硬さを見極めながら収穫するが、生食するには硬かったり熟しすぎたりする場合は加工に回す。「硬めはコンポートに、熟しすぎてしまったものはジャムに加工する。100%無駄にしない」。甘露煮やセミドライ(半乾き)イチジクなどを作ることもある。

ジャムは「果物の形を少し残す。糖度は45度が目安で、甘さは控えめ」。通年で販売する。実が丸ごと8個入ったコンポートは4月ごろまでの販売となる。加工は市内の農産物加工グループに委託している。

同地区は雨巻山(標高533メートル)の麓。里山の自然の中、遺跡や寺社跡が多く、城跡や江戸時代の金の採掘跡も見られる。「県内一、美しい里山だと思っている。小さい里の中に面白さが凝縮されている」と誇らしげ。

以前営んでいた旅行業の経験を生かし、地図やパンフレットを作り、同地区散策の案内役を務める。愛する古里の魅力を伝えながら、丹精して育てたイチジクの味を紹介している。

■メモ
イチジクの里
▽住所は桜川市門毛1388
▽(電)0296(75)0367

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