《食いこ》木村屋本舗(茨城・水戸市) 伝統と革新 和洋菓子探求

茨城新聞
2024年3月31日

茨城県水戸市栄町の県道に面する和洋菓子の専門店「木村屋本舗」。黒を基調としたシックな外観がひときわ目を引く。創業は1944年。飲食店街や古い住宅街が隣接する立地も手伝い、取材に訪れたこの日も、道行く人が次々と来店していた。

「県産食材を用いた地産地消の菓子作りを目指している。和菓子の伝統と洋菓子の革新をモットーに、スイーツの楽しみや喜びを幅広く届けたい」と3代目代表の木村英雄さん(55)。大学を卒業後、神奈川県鎌倉市の洋菓子店で4年間修業し、その後も菓子の名店で経験を重ね、25年前に店を継いだ。

和と洋が融合した雰囲気の店内は、笹(ささ)餅や大福といった和菓子から、クッキーやマドレーヌなどの洋菓子まで所狭しと並ぶ。さらに洋菓子のショーケースでは、生ケーキ類やパフェ、プリンなどが華やかさを競っている。

大子産のリンゴを使ったアップルパイ

 

店奥の壁では店名を刻んだ看板が存在を放つ。幅2メートルを超える無垢(むく)の木の一枚板で、すすけた金文字に威厳が漂う。英雄さんの父、進さんが店を構えた際、知り合いの彫刻家に特注したという。「和菓子職人としての父の魂が宿っているかのよう。今や自分の道しるべとなっている」

英雄さんが店の和菓子の代表格と推すのが「皇帝大福」。古代米(黒米)を混ぜた餅が、こしあん、栗の甘露煮などを包んだ逸品だ。先代が約30年前に開発した。「当時、中国の皇帝が古代米を食べて健康になったという話が広がり、父はそれにあやかったのでは」。ミネラルや食物繊維を豊富に含んだ古代米の餅と笠間産の栗が、甘さ控えめのあんと見事に調和する。

黒を基調とした外観

 

洋菓子のお薦めはアップルパイという。主に大子産リンゴを使用。カットされた断面は大きめのリンゴ果実であふれ、頬張るほどに爽やかな酸味が広がる。

「伝統を守りながらも、新しい世界を切り開きたい」と英雄さん。菓子作りへの情熱と探究心は、趣味のオートバイツーリングでも発揮されている。他県に遠出した際には、現地の菓子店に必ず立ち寄り、気に入った商品を自作の参考にするという。

「菓子作りに終わりはない。お客さまに喜んでもらえるよう、一生勉強です」

木村屋本舗

 

■お出かけ情報
木村屋本舗
▽茨城県水戸市栄町2の10の44
▽営業時間は、月・水-土曜が午前9時~午後7時、日曜・祝日が午前9時~午後6時
▽休業日は火曜
▽(電)029(221)5475