オーさんのタイ料理(茨城・取手) 本場のガパオやカオマンガイ ファン多数のソース

茨城新聞
2024年1月25日

一口頬張れば、スパイスの香りがふわっと鼻に抜ける。辛みや甘み、酸味が絡み合い、食欲がそそられる。茨城県取手市新取手の「オーさんのタイ料理」には、「オーさん」ことタイ出身のソンデン・チッタコーンさん(41)が手掛ける総菜が並ぶ。

「子どももおいしく食べられるタイ料理」を掲げ、辛みが苦手な人も親しめるよう、唐辛子の量が調整できる。

「日本人好みも意識しつつ、タイ人が作る本場の味を大切にしたい」と話すのは、妻の篠原沙織さん(44)。同県常陸太田市出身で、店の代表を務め、営業などを担う。

タイ風焼きそばのパッタイには、たくあんを入れてアレンジ。一方で、ソンデンさんの祖母が作っていた家庭料理の記憶を、味付けに生かすよう心掛ける。

メニューは日替わりで、常時3、4種類を用意。いくつものSNSを駆使し、毎日紹介している。常連客のリクエストに応じて、レシピを増やすこともある。

日替わりの総菜の一(「オーさんのタイ料理」提供)

 

人気はガパオとカオマンガイ。ガパオは、ジャスミンライスに揚げ焼きの目玉焼き、ひき肉をトッピング。ガパオの葉の香りに異国情緒が漂う。

左から、ガパオライス、カオマンガイ(「オーさんのタイ料理」提供)

 

カオマンガイはタイのチキンライスで、パクチーの根や鶏のだしで炊き込んだご飯に、柔らかさにこだわった鶏肉を乗せた。同店ではショウガをたっぷり使い、味に深みを出した。

焼き鳥のガイヤーン、春雨サラダのヤムウンセン、グリーンカレーの炒め物なども並ぶ。

総菜のほか「タイソース」を販売。ナンプラーとレモンのきいたオリジナルと、生のショウガを使ったカオマンガイの2種類だ。オリーブオイルとの相性は抜群で、サラダや冷ややっこ、揚げ物、ギョーザなどにも合う。

「おいしい。販売したら?」。タイソースの料理を振る舞った篠原さんのママ友の一言が、商品化のきっかけだった。幼い子がいる家庭はなかなか外食できず、辛い料理は食卓にも出せない。「ソースがあれば、各人の好みで『味変』できる」と気付いた。

「人とのつながりで色々展開してきました」。篠原さんは振り返る。

オーストラリアでワーキングホリデーに従事していた2017年、篠原さんとソンデンさんは知り合った。結婚後は、日本で生活を始めた。

ソンデンさんは元々、料理がほとんどできなかった。東京都内のタイ料理店で皿洗いを行ううち、料理を任せられると、ちょっとした評判を呼んだ。

19年に、品川区のオフィス街でリヤカーを引き、弁当やタイソースの販売を開始。だが、直後に飲食業界を新型コロナ禍が直撃する。

「知名度を上げるのに必死だった」。篠原さんが当時勤めていた会社の社員に試食してもらったり、イベントに積極的に参加したりした。こうして人の輪が徐々に広がった。

21年夏には、田舎で子育てがしたいとの思いで取手市に引っ越した。アトレ取手でのチャレンジショップに出店した後、翌22年1月に現在の店舗を構え、営業している。

茨城と東京を行き来しながら、販路を拡大する。同県守谷市の朝市をはじめ県南のマーケットなどや都内のJR大崎駅前で開かれるマルシェへの参加のほか、ネットショップにも精を出す。

企業とのコラボも実現。23年12月から、マリオンクレープのサンシャインシティALTA池袋店限定で、同店のタイソースを使ったクレープを販売している。評判も上々だ。

人を巻き込むのが好きとの情熱で、今年3月30日には取手ウェルネスプラザで「ご縁マルシェ」を初めて実施する。

「ご縁を大切にしたいし、いただいた恩は返したい」。さまざまな意見を取り入れながら、これからもタイ料理ファンの裾野を広げていく。

営業時間は午前11時~午後2時、同5時~同8時。金曜定休。

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