《釣り》茨城・大子の八溝川 良型イワナ求め上流へ 数多くの生息確認

茨城新聞
2023年8月31日

私の住む茨城県大子町は山々に囲まれ、清らかな川の流れは魚の宝庫だ。今年は過去に経験がないほどの連日の猛暑。久慈川には連日大勢のアユ釣り師が入り、さおを並べる光景が見られる。

お盆休みを前にした暑い日の午後、私は最高気温を記録する時間帯に久慈川の支流、八溝川の源頭部を目指した。

軽四駆で林道を登り詰めると、やがて鎖を張った通行止めの所に出た。ここからは歩いて上流を目指す。麓より気温はやや低いようだが、それでも林道は暑い。

歩き始めて間もなく、アブの大群に襲われた。数がどんどん増え、視界を遮るほどだ。自然が豊かなことは良いことばかりではない-などと考えながら、渓流釣り師御用達の虫よけを手と首回りに塗布する。効果はてきめんで、刺されなければ毒虫もただの羽虫だ。

渓流釣りの必需品、あると助かる虫よけスプレー

しばらく歩いて谷に降り立つと、ひんやりとした湿気に包まれた。ここまではアブも追ってこない。流れる水はとても清らかで冷たく、水温は16度。水際のコケむした石に、水場を求めてやって来たチョウのスミナガシが静かに止まっていた。

流れに足を踏み入れると小さなイワナがチョロチョロと動き回る。早速5メートルのさおを伸ばして餌のミミズを入れてみるとすぐにアタリが出る。しかし魚が小さいようで餌を引っ張り回すだけで針にかからない。

大きいやつが隠れていそうな深い流れを探して上流へ移動しながら釣る。たまに針にかかってくるのだが、どれも20センチに満たない小型魚。やはり昼間の釣りは難しい。

さらに上流へ歩くと枝の張り出しが多く、釣りにくくなってきた。糸を枝に引っかけないように水面すれすれに仕掛けを飛ばし、深い流れにミミズを入れると、やっと重みのある魚のアタリ!

「よしよし、いるじゃん!」。枝を避けて岩場にズリ上げたのは約22センチのイワナ。「ちょっと写真撮らせてね」と魚を手に持ち、ポーズを決めた次の瞬間、イワナは私の手の中からスルリと逃げ出し、針を外して流れの中に戻っていった。

もうちょっとキメ顔の写真を撮りたかったのだが、今日はこれで満足。日中の釣りだったのでサイズは出なかったものの、かなりの数の生息を確認できた。

近年、餌釣りの渓流釣りにおいても、必要以上に魚を持ち帰らない人が増えてきている。そもそも魚を持ち帰る道具すら持っていない人が多い。

渓流釣りを愛する釣り師一人一人の気持ちのおかげで八溝川のイワナが増えてきているのだと感じた。(奔流倶楽部渓夢・上谷泰久)