日本最大の碓氷製糸(群馬・安中市)見学ツアーが人気 今も現役の自動繰糸機が見学者の心捉える
日本最大の製糸工場、碓氷製糸(群馬県安中市松井田町)で、繭から生糸が作られる過程を工場で見学できるツアーが人気となっている。現役で稼働している自動繰糸機の精巧さと希少性が見学者の心を捉え、8月下旬まで募集する個人向けツアーは、これまでほぼ満員となる盛況ぶりだ。養蚕業を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中、関係者は製糸業の歴史や価値を知ってもらう機会になると期待している。
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熱い湯に入れられた繭。がたがたとモーターが回る音。独特のにおいが漂う中、従業員が忙しく動く。「全国で大きな工場は碓氷製糸と、山形の酒田市の(松岡株式会社の)二つしかない」。6月上旬、今年初めて実施したツアーで、安藤俊幸社長(73)は参加者にこう語りかけた。
碓氷製糸は1959年設立の碓氷製糸農業協同組合が前身。2017年5月に株式会社化した。工場には全国の農家から繭が運び込まれ、その量は国産繭の6割超に当たる。1日に平均で約30キロの生糸を生産。生糸は桐生市や京都府など絹織物が盛んな地域に販売され、着物や絹製品に仕立てられる。
ツアー最大の見どころは、世界文化遺産の富岡製糸場にある日産製の自動繰糸機と同じ型が、現役で実際に動いていることだ。自動繰糸機は日本が世界に先駆けて作り上げた独自技術で、日本と世界の蚕糸業の発展を支えた。蚕糸業に詳しい関係者は「当時、人類には作れないとまで言われた機械だった」と表現する。
現在は生産されていないが、同社は予備部品を大切に保管して稼働を維持している。ツアーに参加した前橋市の男性(72)は「感動した。ぜひとも後世に残してもらいたい」と興奮した様子で話した。
ツアーは県と碓氷製糸が共同で企画。これまで受け入れは団体客のみだったが、昨年から個人の見学者の受け入れを始めた。今年は6月から8月26日までの日程で開催。これまでのツアーには県外からも参加者が多く集まり、ほぼ満員で推移している。元県蚕糸園芸課長で同社常務の土屋真志氏(60)は「碓氷製糸が生き残るために一番大切なことは県民や国民に知ってもらい、愛される碓氷製糸になること。富岡製糸場と一体で見学してもらえるような流れになれば」と期待を寄せる。
個人向けツアーは8月26日まで、毎週土曜の午前と午後に2回実施(8月12、19の両日を除く)。所要約1時間で定員は各16人。見学料は1人500円。予約が必要で、県のフォーム(https://airrsv.net/gunma/calendar)か、県観光物産国際協会(☎027-243-7274)から申し込む。
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