「三つの理想」庭に 波山生誕150年、3館連携へ 筑西・廣澤美術館1月2日開館
新国立競技場を手掛けた隈研吾氏の設計による、私設美術館「廣澤美術館」(筑西市大塚)が2日開館する。隈氏設計の本館のほか、構内の三つの庭が大きな特長となっている。また、2022年は板谷波山生誕150年の節目に当たり、記念企画展の準備を進める市内のしもだて美術館や板谷波山記念館との連携が注目されている。施設の見どころや周囲の期待などを探った。
■命名
空から見ると三角形をなす本館の三面を、それぞれ三つの庭が取り囲む。「浄(きよら)の庭」は作庭家の斎藤忠一氏、「炎(ほむら)の庭」と「寂(しじま)の庭」は東京大学大学院教授の宮城俊作氏が設計した。
浄の庭は、枯れ山水の日本庭園で、白砂の砂紋が水辺の波を思わせるような情景をつくり出している。炎の庭と寂の庭は、芝生の中に小道が巡らされる公園風の造りで、彫刻家の能島征二氏らの制作したブロンズ像などが点在している。
三つの庭は、合わせて「つくは野の庭」と名付けられた。それぞれの庭を命名した、万葉集研究者の中西進氏は「三つの庭を三つの理想の表現」とし、浄の庭について「浄なる水は自由な思考へと心を誘います」、炎の庭について「炎だつ岩石の群れは躍動へと体を促します」、寂の庭について「寂にそよぐ竹林は撓(しな)やかな完成へと人間を導きます」と説明している。
■構想
同館のある広沢グループのテーマパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」は自然、健康、文化をテーマとし、ゴルフ場や医療系専門学校、バラ園などが立地。美術館構想は、シティの建設と共に約30年前から温められてきた。設計者の隈氏との交流は、新国立競技場の構想以前から始まっている。
設立者で広沢グループの広沢清会長(82)は「『文化がなければ街にならない』という人もいる。だから美術館を造った」と話す。周囲には「芸術の村」があり、絵画や版画、陶芸など各分野の作家7人がアトリエを提供され、制作拠点としている。
シティ内では現在、戦後初の国産旅客機「YS11」が、来年4月の一般公開に向け準備が進められている。すでに公開されている蒸気機関車「D51」などの鉄道車両だけでなく、船舶の展示も計画されている。
■期待
板谷波山生誕150周年に向け、しもだて美術館などでは記念展の準備が進められている。廣澤美術館でも企画展を連動させようと構想を練る。広沢会長は「(波山の作品を)多少持っているので、その時を起点にして発表しようと思っている。3カ所で展示するよう連携させてもらいたい。同調した方が良い企画展ができる」と意欲を示した。
関係者は3館の連携が今後もたらす大きな可能性に思いを巡らす。しもだて美術館の柏木登館長(67)は「3館で『芸術のトライアングル』ができあがり、筑西の文化面での発信力は大幅に増加する。街の活性化にも大きく寄与する。芸術で結ばれた豊かな物語がこれから始まると思うと胸が躍る」と話した。
ちくせい観光ボランティアガイド協会の諏訪光一会長(66)は「波山生誕150周年を前に、廣澤美術館ができる。訪問者に『さすが波山の故郷だ』と思わせる条件がそろった」とし、「波山だけでなく、他施設と連携した今後の企画に、大いに期待したい。何回訪れても楽しめる仕掛けを作れるよう、頑張ってほしい」と願いを込めた。
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