久米旧邸宅、沼田市街地へ 「大正ロマンの街」目玉に
沼田市名誉市民で、皇居二重橋の設計などに携わった元衆院議員の久米民之助(1861~1931年)が暮らした東京都渋谷区の旧邸宅について、同市が中心市街地に移築することを決めたことが25日、分かった。市は、市役所が入る複合施設「テラス沼田」の周辺に歴史的な建造物を集約し、大正ロマンをイメージした街づくりを進めており、趣のある洋館の旧邸宅の移築を目玉の一つとしたい考えだ。
旧邸宅は帝国ホテルと同一設計者といわれ、1912年ごろの建築とされるが、正確な年代などは不明。コンクリート造り平屋建てで、床面積は約115平方メートル。久米家の後には紀州徳川家の迎賓館としても使われた。
建物が解体される予定となり、地元住民や専門家らでつくる保存プロジェクトと、久米氏と縁が深い同市が移築に向けて協議してきた。プロジェクト事務局の松岡恒太郎さん(東京)は「沼田は最適地で、貴重な建物を残すことができてほっとしている」と受け止める。
久米氏は、荒れ果てた沼田城跡の土地を私財を投じて買い取り、公園として整備して旧沼田町に寄贈したという。市は「沼田にとっての恩人。恩返しのために、しっかり整備を進めたい」としている。
移築するのは本町通り(国道120号)の周辺で、数年での工事完了を目指す。市はこれまでに県指定重要文化財の旧沼田貯蓄銀行、旧土岐家住宅洋館を移築。年内には、大正時代に建てられた旧沼田教会紀念会堂の移築も完了する。