地元農産物 ぜいたくに  BLUE MAGIC(宇都宮)

下野新聞
2021年9月9日

 宇都宮の“まちなか”から栃木のビールを発信-。2013年にビアパブとしてオープンし、翌14年に店内で醸造を始めた「BLUE MAGIC」。設立した栃木マイクロブルワリーのイメージカラー「青」を継承した。地元産の果物や野菜、スパイスを使い、「魔法のようにビールの概念を変える」という思いが込められている。

 一度に醸造できるビールは約300リットル。瓶にして約800本ほど。県内のブルワリー(ビール醸造所)の中では規模が小さい方だが、「だからこそ小回りが利くし、原料をふんだんに使ったビールに挑戦できる」と店長で醸造を担当する中尾真仁(なかおまさひと)さん(33)は強みを語る。これまで、とちおとめなど県内の農産物をぜいたくに使ったビールを仕込んできた。「いろんな農家さんとコラボして、ビールを通して地域の魅力を発信したい」と力を込める。

 醸造の際に気を付けているのが、本来持つおいしさを損なう香り(オフフレーバー)が無いようにすること。「ビールの質を高く保つことが重要」と強調する。一方で「ビール造りに教科書はない。学べるところもほとんどない」。だからこそ、県内のブルワリーと情報を共有し合い、品質向上を図っている。

 「年間を通して同じビールは置かない」のもポリシーだ。例えば同じペールエールであっても、仕込みの段階で少し変化を加え、磨きをかける。最近ではオープン8周年を記念して、8種類のホップを使ったものや、アルコール度数が10%を超えるトリプルIPA(インディアペールエール)などを手掛けた。

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 「造り手が直接店に立つことって、他のお酒だとあまりないですよね」と中尾さん。週の前半は醸造に当たり、週末はビアパブの店主としてビールを提供する。

 仕込みタンクを見ながらビールを飲める貴重な空間。造り手と客の距離が近いからこそ、会話の中で新しいアイデアが生まれることもあるという。「固定観念にとらわれず、今までにないものにチャレンジしていきたい」

 ビアパブでは県内のブルワリーのビールを中心に提供しているが、新型コロナウイルスの収束が見通せない今は、我慢の時期。「県外の人にはなじみのない栃木の農産物もある。コロナが収まったら、栃木のビールを県外の人にもより深く知ってもらえるようなことをしたい」と先を見据えている。

 新たな原料や技術など、着実に歩を進めている世界のビール業界。「置いて行かれないように。むしろ、新しいものを出せるように。今日よりも明日、おいしいものを造れるようになりたい」。飽くなき向上心で、多彩なビールを魔法のように造り続けていく。

 【メモ】宇都宮市池上町3の8。緊急事態宣言中は金曜~日曜にテークアウトのみの営業。営業時間はフェイスブックやツイッターなどのSNSで確認を。通常時は県内のブルワリーで造られたビール10種を楽しめる。食べものの持ち込みが可能。営業時間は木曜、金曜が午後3~10時。土曜、日曜は正午~午後10時。(問)028・307・0971。

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