東西の美意識を融合 益子陶芸美術館企画展「バーナード・リーチ-100年の奇跡」 8月22日まで

下野新聞
2021年6月19日

 濱田庄司(はまだしょうじ)と英国の陶芸家バーナード・リーチが同国南西端のセント・アイヴスに創設した製陶所「リーチ工房」の開設100年を記念し、企画展「バーナード・リーチ-100年の奇跡」が、益子陶芸美術館で開かれている。民芸運動に関わる中で東洋陶磁にひかれ、西洋の美意識との融合を追求したリーチの代表作や弟子たちの計約90点の作品から、リーチが目指した陶芸やその精神性がどのように具現化され、受け継がれてきたかをたどっている。

 濱田(1894~1978年)とリーチ(1887~1979年)がコーンウォール州の港町セント・アイヴスに東洋式の登り窯を築き、リーチ工房を立ち上げたのは1920年。100年の節目に当たる昨年、同館は英国と益子の二つの近代陶芸史の流れを約60人の陶芸家の作品で展覧する企画展「英国で始まり 濱田・リーチ 二つの道」を開催した。

 その流れをくむ今回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期となっていた「益子×セントアイヴス100年祭」事業の一環として、「いろいろな意味でパイオニアだった」(川北裕子(かわきたゆうこ)同館学芸員)というリーチの軌跡を紹介。初期から晩年までの作品で振り返る単なる回顧展ではなく、泥しょう状の化粧土で装飾する英国スリップウェアの再興、スタンダードウェア(定番商品)の製造、日本各地の窯業地滞在、リーチ工房から羽ばたいた陶芸家たち-の四つの観点から顕彰する。

■在り方を啓発

 20代のころ日本で焼きものに目覚め、母国の伝統的なスリップウェアに美を見いだしたリーチは、濱田を伴って帰英後、スリップウェアをよみがえらせるとともに、英国の伝統と東洋陶磁が相まった焼きものを目指す。終生東西を往還し、益子のほかにも九州や山陰での滞在制作などを行い、執筆活動を通して陶芸家の在り方を啓発するなど、芸術としての価値を高めた。

■世界中で体現

 特筆すべきはリーチ工房におけるスタンダードウェアの製造で、手作りの器が手頃な価格で通信販売され、人々の生活を彩ると同時に、工房の経済的支柱、スタッフの技術向上にもつながった。工房には世界各国の陶芸家が訪れ、その陶芸精神は1世紀にわたり世界中で体現し続けられている。

 「ガレナ釉筒描人魚文(ゆうつつがきにんぎょもん)大皿」(大原美術館蔵)「鉛釉まつえ文字皿」(日本民芸館蔵)など、有数のリーチコレクション館作品のほか、晩年の写真も展示。最晩年に撮られたポートレートは、濱田らを見送った寂寥(せきりょう)とはるかな極東の地へ思いがのぞくような瞳が印象的だ。

 8月22日まで。会期中、関連プログラムとして講演会が予定されている。(問)同館0285・72・7555。

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