《食いこ》常陸大黒、艶やか煮豆 奥久慈屋吉餅(大子町) 和菓子も人気

茨城新聞
2020年12月25日

大子町特産の素材を生かした菓子を手掛ける「奥久慈屋吉餅(きちべい)」(松浦勤社長)では正月を前にペースを上げて、常陸大黒の煮豆作りが行われている。同社の柳田好男さん(39)が銅鍋からざるごと引き上げると、光沢のある漆黒の豆が現れた。

豆の名は「常陸大黒」。県が育成したベニバナインゲン(花豆)のオリジナル品種で、主に県北山間地域で栽培されている。花豆というと種皮色が白や紫のまだら模様を思い浮かべるが、常陸大黒は黒一色で大粒。

同社は町特産のこんにゃく・ゆばの製造販売や日帰り温泉施設などを営む袋田食品のグループ会社。2009年に開業した。松浦社長は「地域活性化や地産地消を目指し、素材や作り方にこだわって商品づくりをしている」と話す。常陸大黒を使った菓子類は煮豆や大福、だんご、もなかなど14種類。「常陸大黒は栽培が難しく、生産者が手塩にかけた豆を、今度は時間をかけて煮ていく」。だんごと大福はもち米粉ではなく、大子町産コシヒカリをきねでついて作る。だんごはうるち米独特の粘り気と上品な甘さの常陸大黒あんの組み合わせ。「大黒大福」とヨモギを練り込んだ「大黒草大福」は小豆あんに豆が2個入る。

常陸大黒の和菓子

煮豆作りはしわが寄らないよう、割れないようにと、細やかな注意を払いながらの作業。「皮が硬いから、しっかり水に漬ける。軟らかくなるまで下煮して、蜜を吸わせる」と柳田さん。

3日浸水させ、たっぷり水を吸って膨らんだ豆を約3時間半、丁寧にあくを取りながら下煮する。煮る時間はあくまで目安。「豆の状態が毎回違うから」と軟らかさをその都度確認する。グラニュー糖の蜜を入れたら、しばらく休ませ、甘さを染み込ませる。さらに、仕上げの蜜を入れ煮詰める。一晩置くと、ふっくらとして艶やかな煮豆が出来上がる。傷やしわなどがないか、一粒ずつ選別と、もう一手間かける。

松浦社長は「全国展開する大手スーパーの高級おせちに採用されて5年目。知名度がアップしてきた」と喜ぶ。常陸大黒の煮豆は店舗で、通年で販売。26日からおせち用に県内など関東の一部スーパーにも並ぶ。

■お出かけ情報
奥久慈屋吉餅
▼住所は大子町袋田2247の7
▼営業時間は午前8時~午後5時半
▼(電)0295(72)1155

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