光る絹糸で刺しゅう 7月から県立近美 県産提供受け展覧会

上毛新聞
2019年5月27日

 高崎市の現代美術作家、竹村京さん(44)が県産シルクを使った作品制作に取り組んでいる。昨年秋からは県蚕糸技術センターの提供を受け、緑色の蛍光シルクを作る遺伝子組み換え蚕(GM蚕)の絹糸を新たな素材として取り入れた。「絹の長い歴史と、最先端の群馬のシルクの今を作品として残したい」と竹村さん。県立近代美術館で7月13日から開かれる展覧会に向けて意気込んでいる。

 県産シルクとの付き合いは東京芸術大4年のとき以来。奈良と京都を訪れ、日本最古の刺しゅう「天寿国繡帳」を目にし、千年以上持つ刺しゅうの存在感に引かれた。糸専門店から絹産業が衰退している現状を聞き、「それなら私が刺しゅうをやろう」と思った。

 2000年にベルリンに留学してからも京都から絹糸を取り寄せていたが、「もとは群馬産だと知らずに使っていた」という。15年に帰国し、縁あって高崎に居を構えた。今回の展覧会に合わせ、同センターが試験的に作った蛍光シルクを提供してもらえることになった。

 展覧会は写真家、長島有里枝さん(東京都)との2人展で、テーマは「まえといま」。竹村さんはトランプや壊れた電球をレース地で包んで蛍光シルクで刺しゅうを施し、時間の経過や記憶を表現。現代美術作家で夫の鬼頭健吾さん(42)の使った筆約100本にも刺しゅうする。このうちトランプは、時代や国を超えて共通認識されることから、8年ほど前から作品にしている。

 蛍光シルクは紫外線を当て、特殊なフィルターを通すことで光って見えるため、展示方法を工夫する。光る絹糸を提供した同センターは「作品を通して群馬の養蚕技術への理解も深まればありがたい」と期待。展覧会と県の養蚕技術のPRのため、作品の一部を東京の「ぐんまちゃん家(ち)」に展示する計画もある。