海浜鉄道・湊線 年間利用100万人目前 延伸実現へ活性化全力

茨城新聞
2016年5月29日

東日本大震災以降、年々利用者を増やしてきたひたちなか海浜鉄道湊線の地元住民らが、年間輸送人員100万人を目前に、さらなる沿線地域の活性化に期待を高めている。5月上旬には、ひたちなか市内のイベントで、鉄道を応援する女子大学生や女子高校生らも参加して延伸実現を目指す募金活動を実施した。沿線周辺地域は、鉄道と一体のまちづくりを強化しようと、利用者を商店街などに呼び込む仕掛けを模索している。

JR常磐線勝田駅近くの商店街で8日に開催された「勝田TAMARIBA横丁」。女子大学生や女子高校生が同鉄道延伸の実現を目指して募金を呼び掛けた。活動に参加した鉄道ファンの大学2年、宇都木葵さん(19)=古河市=は「地域に密着した路線」と、湊線のさらなる活性化に期待する。

募金活動を始めたのは、同イベントを主催した「ひたちなかまちづくり会社」。同社の小野修社長(66)は、利用増や沿線活性化の柱となる延伸構想について「市内に人を呼ぶ材料になる」と強調する。

市などは、現在の勝田-阿字ケ浦間(14・3キロ)の路線を、阿字ケ浦駅から国営ひたち海浜公園方向に数キロ延伸する構想を議論している。早ければ2024年度の実現を目指す。

現在の湊線は08年、廃線危機の茨城交通湊線を引き継ぐ形で開業した。その後、11年3月11日の東日本大震災で大きな被害に見舞われた。全線でレールがゆがむなどしたほか、金上-中根間のため池の決壊で路面がさらわれ、約100メートルにわたってレールが宙づりになった。さらに、平磯-磯崎間のトンネル内に亀裂が入って一部区間の運休は同年の7月下旬まで続いた。

震災から5年が経過し、この間、復興・再生に向けた全力の取り組みは、利用者増という数字で表れた。10年度に約78万6千人だった年間輸送人員は、11年度は被災による運休などから約67万4千人に落ち込んだ。しかし、12年度には大震災前の水準の約78万8千人に回復、13年度約84万人、14年度約94万人と100万人に迫る勢いだ。

延伸構想には周遊性を高める狙いがある。検討が進む延伸ルートは国営ひたち海浜公園に向かう。同公園には、春のネモフィラ、秋のコキアなどを目当てに大勢の観光客が訪れ、昨年度の年間入園者は過去最高の約200万人を突破した。

来場者がピークとなる時期は、周辺道路の激しい渋滞が発生する。同鉄道の吉田千秋社長(51)は「延伸によって車で(同公園に)来ていた人が渋滞を避け鉄道を利用するだろう」とみる。

沿線地域では、延伸を地域振興の好機とする捉え方もある。同鉄道は昨年から、5月の開業記念祭を、同市那珂湊地区の商店街イベント「みなと☆再発見☆フェス」と連動して開催している。今年のフェスには鉄道ファンを含めて約8千人(主催者発表)が来場した。大川恵介実行委員長(38)は「より緊密に鉄道と連携し、乗客を商店街に呼び込む対策を考えたい」と意気込む。

また、終着の阿字ケ浦駅近くにある阿字ケ浦海水浴場には最盛期の1980年代、年間約200万人の海水浴客が訪れた。現在は同約9万人まで激減している現状を踏まえ、同地区で旅館を営む黒沢一市観光協会副会長(85)は「人が来れば何かが起こるはず。延伸は阿字ケ浦復活の希望」と話した。

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